2024年11月19日更新
市街化調整区域で家を建てたら後悔する?その理由と注意点を徹底解説
市街化調整区域ではインフラや生活施設が整備されていないため、家を建てると後悔することがあります。この記事では市街化調整区域で家を建てると後悔する理由や、家を建てるのに向いている人、建てる際の注意点について解説していきます。
目次
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、都市計画法に基づいて市街地の無秩序な拡大を防ぎ、農地や森林などの自然を保護することを目的に指定された区域です。
この区域では、住宅や商業施設の建設が原則として制限されており、特別な許可がなければ新たな建物を建てることはできません。
また、既存の住宅であっても増改築や建て替えには自治体の許可が必要である点も、市街化調整区域特有の特徴です。
市街化調整区域に住宅を建てて後悔した理由は?
市街化調整区域に住宅を建てたことで、後悔を感じる方も少なくありません。
ここでは、市街化調整区域での生活においてよく挙げられる後悔の理由についてご紹介します。
プロパンガスの利用が多い
市街化調整区域では都市ガスの供給インフラが整備されていないことが多く、そのため多くの家庭でプロパンガスが使用されています。
プロパンガスは配送や人件費がかかるため、都市ガスに比べてコストが高くなりがちで、結果として毎月の光熱費が増え、後悔する方も少なくありません。
地域によっては都市ガスとプロパンガスの価格差が小さい場合もあるため、市街化調整区域での生活を検討する際には、都市ガスの供給状況やプロパンガスとの料金差を事前に確認しておくことをおすすめします。
浄化槽の利用が多い
市街化調整区域ではインフラ整備が遅れており、下水道に接続できない地域では浄化槽を使用しています。
浄化槽の設置には、5人槽の場合で80万円以上の初期費用がかかり、さらに定期的な清掃や点検費用が必要です。
浄化槽の設置費用・撤去費用の目安
槽の大きさ | 設置・交換費用 | 年間維持費 (メンテナンス費用) |
5人槽 | 80〜120万円 | 6万円~ |
7人槽 | 100〜140万円 | 8万円~ |
10人槽 | 120〜150万円 | 10万円~ |
場合によっては交換や撤去も必要となるため、維持費が予想以上にかさみコスト面で後悔する方も少なくありません。
市街化調整区域での生活を検討する際は、浄化槽の設置・管理にかかるコストや手間について、事前に十分な理解をしておくことが大切です。
駅、学校、スーパー等から遠くて不便
市街化調整区域では住宅や商業施設の建設が制限されているため、場所によっては駅や学校、スーパーなどの生活に必要な施設が遠くて不便に感じることがあります。
自然豊かな環境は魅力ではあるものの、日常の買い物や通勤、子どもの通学が不便で後悔する方も少なくありません。
また、家族ごとに自動車が必要なケースが多く、燃料費や自動車維持費などが家計を圧迫します。
周辺環境が充実した場所で暮らしたいと考える方には、市街化調整区域は適さない可能性が高いため、周辺環境をしっかり確認することが重要です。
近所に同年代が少なく生活に不便
市街化調整区域では、周辺に古くから住んでいる年配の住民が多く、特に子育て世帯にとって同年代の家庭が少ない傾向にあります。
市街化調整区域での生活を考える際には、周囲の住民層やコミュニティについても不動産や役所を通じて確認しておくことをおすすめします。
市街化調整区域のデメリットは?
ここまでは、市街化調整区域で物件を購入した方が実際にどのような点で後悔しているのか、その具体例を挙げて解説しました。
ここからは、市街化調整区域のメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。
まずは市街化調整区域での生活には、どのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。
改築や建て替えに許可が必要
市街化調整区域では、建物を改築や建て替える場合にも自治体から開発許可を得る必要があります。
特に中古住宅を購入した場合でも、自由に改築することが難しく、許可取得には時間と費用を要することがあります。
都市計画法第34条では、市街化調整区域で建て替えや増築を行うために、さまざまな条件を満たす必要があると定めています。
許可が下りるかどうかは、立地条件や自治体の都市計画によって異なるため、建て替えや増築を検討している場合は、自治体や不動産に前もって確認しておくと良いでしょう。
>>市街化調整区域に住宅を建てられる条件や許可申請の手順はこの記事で紹介!
インフラ整備が不十分な場合もある
市街化調整区域のデメリットの一つとして、インフラ整備が不十分である点が挙げられます。
市街化調整区域は、都市計画法に基づいて無秩序な市街化を防ぐために開発が制限されており、下水道や都市ガスのほか、電気・ガス・水道などの基本的なライフラインでさえ十分に整備されていない可能性があります。
さらに、災害時に交通手段が限られると、ライフラインが整備されていないことが大きな問題となることもあるでしょう。
市街化調整区域で建築許可が下りた場合でも、周辺インフラの状況については事前に十分に確認しておくことが大切です。
商業施設が周りにできにくく利便性が低い
市街化調整区域は、住宅の建築が制限された地域であり、下水道やガスといったインフラが整っていないことから、駅や学校、病院、商業施設などが少ない傾向にあります。
そのため、日常の買い物や外食などのサービスを利用する際には遠方まで足を運ばなければならず、気軽にコンビニに行くことも難しい場合が多いです。
こうした生活の不便さに後悔する方も少なくありません。
人が少なく自然が豊かな落ち着いた環境が魅力ではあるものの、利便性を重視したいライフスタイルには適さない可能性が高いでしょう。
土地の売却が困難である
市街化調整区域では、土地の売却が難しくなるため注意が必要です。
土地の購入は通常、建物の建設を前提としますが、市街化調整区域では「建築制限」が大きな障壁となり、買い手がなかなか見つからないケースが多くあります。
購入希望者が土地を購入しても、希望する用途でその土地を利用できないリスクが高いため、結果的に買い手が着かず売却が困難になることも少なくありません。
資産価値が上がる可能性が低い
資産価値が上がりにくい点も、市街化調整区域の特徴の一つです。
建築制限やインフラの未整備、利便性の低さなどが要因となり、市街化調整区域は需要が低いため、結果的に資産価値が上昇しにくくなります。
長期的な居住や、将来的にお子様やお孫様への資産継承を考えている方は、慎重な計画が必要でしょう。
集客が難しく商売が限定される
市街化調整区域では、商業施設の建設が制限されているため、できる商売の種類が限られてしまいます。
大規模な商業施設やアミューズメント施設などは建設許可がおりる可能性は低く、商店や美容院など小規模なものに商売は限定される傾向があります。
また、集客が難しい点も、市街化調整区域で商売を行う際の大きなデメリットです。
この区域は、そもそも人口が少ないため、エリア内での集客が見込めず、広い商圏からお客様を呼び込む必要があります。
市街化調整区域でビジネスを展開する際には、これらの特徴や制約を十分に理解し、事前に計画を練っておくことが重要です。
ローンが通らない可能性がある
市街化調整区域では、ローン審査が通りにくい点にも注意が必要です。
市街化調整区域は需要の低さから資産価値が上がりにくく、金融機関も担保価値を抑える傾向があるため、もしローンが通ったとしても融資額は低くなる可能性があります。
とくに大手銀行やネット銀行では、市街化調整区域の物件は取り扱わないことが明示されている場合があり、市街化調整区域はローン審査の対象にならないケースもあります。
補助金等の対象外になる可能性がある
市街化調整区域では、国や自治体が市街地の拡大を抑制したいと考えているため、建築に関する補助金や税金の優遇措置が受けられない可能性があります。
例えば、長期優良住宅に対する補助金(100万円/戸)や、ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅への補助金(80万円)は、市街化調整区域では半額になる場合があり、都市部での建築と比較して費用負担が大きくなります。
市街化調整区域での住宅建築を検討する際には、こうした補助金が利用できるかどうか、事前に確認しておくことが大切です。
市街化調整区域のメリットは?
次に、市街化調整区域のメリットを紹介します。
「購入すると後悔する」と言われることが多い市街化調整区域ですが、税制面や環境面でメリットもあります。
市街化調整区域の購入や転売を検討している人は、メリットに関してもしっかりと把握をしておきましょう。
土地を安く購入できる
市街化調整区域は、開発が制限されているため資産価値が上昇しにくく、同じエリアの市街化区域に比べて安く土地を購入できるのが特徴です。
土地の購入費用を抑えることで、その分を建物の費用に費やせるため、理想の住まいや充実した設備の実現がしやすくなります。
固定資産税が安くなる
市街化調整区域では土地を安く購入できるため、毎年の固定資産税も同じエリアの同等の広さの土地より抑えることができます。
例えば市街化調整区域の土地100坪を1坪7万円で購入した場合と、近隣エリアで同じ広さの土地を1坪10万円で購入した場合、年間の固定資産税は以下の計算式のように、市街化調整区域の方が4万円以上安くなります。
3万円(1坪当たりの差額)×100坪×1.4%(固定資産税率)=4万2,000円 |
購入時だけではなく、毎年の税金も安くなるのは市街化調整区域の大きなメリットといえるでしょう。
都市計画税が不要になる
市街化調整区域では、都市計画の対象外となるため、都市計画税がかかりません。
都市計画税は道路や学校などのインフラ整備を行うために課される税金ですが、開発が制限された市街化調整区域はこの対象外とされています。
たとえば、近隣の市街化区域に1坪あたり10万円の100坪の土地がある場合、都市計画税は年間約1万9,500円が必要な計算ですが、市街化調整区域では課税されません。
リラックスしやすい環境で生活できる
市街化調整区域は、自然が豊かでリラックスしやすい環境で生活できるメリットがあります。
開発が制限されているため、周囲には農地や森林が広がりスローライフを楽しむことができます。
また、高い建物が建つ可能性が低いため、日当たりが確保され圧迫感も少なくのびのびとした生活を送れるでしょう。
さらに、市街化調整区域は基本的に郊外に位置しているため、交通量が少なく騒音に悩まされることもほとんどありません。
市街化調整区域に家を建てるのに向いている人は?
市街化調整区域に家を建てることを検討する場合、自分がその区域に向いているかどうかを判断する必要があります。
ここでは「向いている人の特徴」を3つ紹介します。
広い土地に家を建てたい人
市街化調整区域は、広い庭や駐車スペースを確保し、ゆとりのある敷地に家を建てたい方に適しています。
市街化調整区域では、相場の7~8割ほどの価格で土地を購入できるため、同じ予算でもより広い土地を手に入れることが可能です。
広々とした住環境を求める方にとって、市街化調整区域は大きな魅力と言えるでしょう。
低コストで住宅を取得したい人
低コストで住宅を取得したい人にも市街化調整区域はおすすめです。
需要が少ないことから土地を安く購入できるのと同じように、中古住宅も安く手に入る傾向があります。
土地と中古建物を合わせて購入する場合、より費用を抑えた取得が可能です。
さらに、土地の評価額が低いため固定資産税も安く抑えられ、長期的なランニングコストを軽減できるのも魅力です。
ただし、生活インフラが整備されていない可能性があるため、プロパンガスや浄化槽が必要な場合などは、その維持費がかかる点に注意をしてください。
自然豊かな環境で生活したい人
市街化調整区域は開発が制限されているため、自然豊かな環境で長く生活したい方に適しています。
商業施設が少なく人の出入りも限られているため、静かでリラックスした暮らしができるのが特徴です。
また、交通量が少ないため子育て世帯にとっても安心できる環境であり、自然の中で季節の移り変わりを感じながら、のびのびとしたスローライフを満喫することができるでしょう。
市街化調整区域に家を建てる際の注意点
市街化調整区域に家を建てる際の注意点を知ることで、トラブルを未然に防ぎ、建築計画をスムーズに進めることができます。
ここでは、「再建築できないケース」や「申請費用が必要」など、特に注意すべきポイントについて解説します。
既存住宅を先に解体すると再建築できないことがある
市街化調整区域では、既存住宅を先に解体してしまうと再建築ができなくなる可能性があるため注意が必要です。
市街化調整区域に指定される前に建てられた建物であれば、条件付きで再建築が認められるケースもありますが、先に建物を解体して更地にしてしまうと、再建築許可が下りない場合があります。
解体工事を検討する際には、事前に役所や専門家と相談し、再建築や土地活用についてしっかり確認しておくことが重要です。
住宅建築するのに申請費用を支払う必要がある
市街化調整区域で住宅を建築する際には、申請費用が必要となるため注意が必要です。
具体的には、次の2つの費用がかかります。
- 開発許可や建築確認申請に必要な申請費用
- 行政書士や専門家に依頼する際の手数料
開発許可に必要な費用は、土地の面積や用途によって異なり、一般的には1㎡あたり1,500円から2,000円程度が目安とされています。
また、申請費用は手続きの内容や地域によっても異なるため、事前に不動産会社や住宅会社に詳細をしっかりと確認しておくことが重要です。
Q&A 市街化調整区域で良くある質問
市街化調整区域で良くある質問を紹介します。市街化調整区域で土地を購入してから後悔しないためにも、気になる質問をチェックしてみてください。
- 地目が宅地なら市街化調整区域でも住宅を建てられる?
-
地目が「宅地」となっていても、自治体への開発許可申請は必要です。
都市計画法の基準を満たしていない土地では、建設許可が下りない可能性もあるため、購入前に自治体の窓口や不動産会社にしっかりと確認しておきましょう。
- 市街化調整区域の土地は買わない方がいい?
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市街化調整区域の土地は安くて税制面でメリットがある一方、「建築に厳しい制限がある」、「インフラが整っていない」、「商業施設・学校・駅などが遠い」などのデメリットがあります。
メリットとデメリットをしっかり把握して慎重に検討してください。
- 市街化調整区域は将来的に市街化区域に変更になる可能性はある?
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市街化調整区域が将来的に市街化区域へ変更される可能性はありますが、人口減少が進む現状ではその可能性は低いと考えられます。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!
この記事で大体の予想がついた方は次のステップへ行きましょう!
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」
「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」
そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。
一生のうちに建て替えをする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。
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