2024年02月15日更新
市街化調整区域で家は建てられる?方法と手順を解説
市街化調整区域というエリアがあることをご存知でしょうか。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、このエリアで暮らしたいという方もいらっしゃいます。これから市街化調整区域で家を建てたいと考えている人に向けて、知りたい情報を提供していきます。
市街化調整区域で家の建て替えを検討している方に向けて、市街化調整区域で家を建て替える方法や、家の建て替えに関する手続き、メリット・デメリットなどについて解説していきます。
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目次
市街化調整区域とは何か?
市街化調整区域とは、都市計画法によって都市化を抑制した地域のことです。
その地域に街を作る予定がなく、原則としてその地域には家を建てることができません。
市街化調整区域は、基本的に農地や森林を守るために重点が置かれている地域です。
しかし、2001年5月18日に改正された都市計画法により、自治体によっては市街化調整区域での建築要件が緩和されているところも出てきており、条例に則って市街化調整区域に住宅を建てているケースもあります。
市街化調整区域で家を建てるには?
基本的には家を建てることができない市街化調整区域ですが、都市計画法の改正以降、家を建てたいと考えている方もいらっしゃいます。
ここでは市街化調整区域で家を建てる方法について解説していきます。
宅地利用が認められた土地に建てる
市街化調整区域で建物を建てたい場合には、行政によって宅地利用が認められた土地に建てることができます。
ただし、都市計画法第34条に該当する3種類の建物に限定されているので注意が必要です。
その建物は次に挙げる3つになります。
住宅兼店舗
住宅兼店舗は、自宅と店舗が一体化した建物のことです。
建物の1階を店舗にし、2階を居住スペースにするなど、個人商店でよく見られます。
建築可能な店舗としては、日用品の販売や修理などを自営で行う店舗に限られています。
そして、店舗面積が最低でも建物の延床面積の2分の1以上なければいけません。
店舗面積については各自治体によって規定が異なる場合があるので、確認が必要です。
分家住宅
分家住宅とは、既にその土地で農業を営んでいる本家から分家した子供や孫、兄弟などの新たな世帯が住むために建てる住宅のことです。
分家住宅を建てるためには条件があり、建築主が本家となる者の3親等以内の血族であること、家を建てる本人に持ち家がないこと、本家の跡取りが明確になっていること、この3つをクリアする必要があります。
既存住宅の建て替え
既存住宅が市街化調整区域に区分される前から建っている、線引きの日以前に建物が建っている場合は、宅地に変更するための許可は不要になります。
基本的に同じ敷地で同じ規模、同じ用途の建物であれば建て替えや増築は可能です。
立地基準を満たした土地に建てる
都市計画法第34条第11号、第12号、第13号及び第14号に定められた立地基準を満たす土地であれば家を建てられる可能性があります。
市街化調整区域で建物を建てるために必要な開発許可とは
市街化調整区域では、建物を建てるために開発許可と呼ばれる許可が必要となります。
ここでは、必要な開発許可について解説していきます。
都市計画法第34条の開発許可の基準について
市街化調整区域における家の建築に関連する開発許可は、都市計画法第34条によって基準が定められています。
ここでは、都市計画法第34条第11号、第12号の内容について解説し、具体的な例をご紹介します。
都市計画法第34条第11号の内容
市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの
要約すると、自治体が条例で指定する市街化区域に近接する区域において、条例で定める周辺環境の保全上支障がある用途に該当しないものということになります。
都市計画法第34条第11号は、俗に市街化調整区域にある既存集落と呼ばれており、およそ50戸以上建物が存在していることを自治体に認めてもらう必要があります。
市街化地域と日常的な生活圏で一体化されており、自治体の条例に反しない用途の建築物を建てることについて規定されています。
これから市街化調整区域に家を建てようと考えているのであれば、自治体の条例は確認しておきましょう。
都市計画法第34条第12号の内容
開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの
こちらは、周辺の市街化区域の促進が困難または著しく不適当と認められる開発行為であること、例えば親族同士で近距離に居住した方が良いと判断されたケースで、市街化調整区域に長期的に居住する人の親族用の住宅などがこれにあたります。
自治体が災害の防止などを考慮して条例で区域、用途を限定して定めた建築物しか建てることができないということになります。
許可申請の方法について
市街化調整区域にある土地に建物を建てる場合、都市計画法第43条により都道府県知事の許可を受ける必要があります。
市街化調整区域には原則として住居を建築することはできません。
しかし、市街化区域から1km圏内や市街化区域まで4mの道路がつながっている場合、申請することで建築できます。
この場合、市街化調整区域に大規模な造成工事がないことが基準になります。
ちなみに、すでに住居を所有している方は申請できません。
家を建てる許可を申請する場合は、自治体に申請して個別に審査が必要です。
次項では、許可申請の方法について解説します。
市街化調整区域で建築物を建てる場合の手続きの流れ
市街化調整区域で建築物を建てる場合には、自治体に対して次のような手続きが必要になります。
自治体によって手続きの内容が異なることがあるので、詳しくは自治体の関係部署にお問い合せください。
自治体へ事前相談及び事前協議
自治体に向けての事前相談書を作成し、作成に必要な書類を複数入手する必要があるため、自治体の担当部署や不動産会社へ相談してください。
事前相談書には、次に挙げる書類がセットで必要となります。
- 建築相談票
- 提案基準第4号(分家住宅)事前相談票
- 農業を営む者の居住の用に供する建築物についての申告書
- 農産物の直売所の用に供する建築物についての申告書
- 貨物自動車運送事業の特別積み合せ貨物に供する建築行為等についての立地申出書
自治体からの判定結果の回答
提出した事前相談書の内容を自治体が確認し、計画の内容によって建築の可否と許可の要否が判定されます。
その判定結果の回答によって、次の手続きが変わってくるのでご紹介します。
許可が不要の場合
許可が不要の場合は、建築確認申請に進みます。
建築確認とは、家を建てる前に建物や地盤が建築基準法に適合しているか確認することです。
建ぺい率や容積率などが守られているか、シックハウス対策が行われているか、居室は十分に採光が確保されているかなどが確認されます。
2020年からは、省エネ基準に達しているかも確認されることになりました。
許可が必要な場合
許可が必要となった場合、都市計画法第34条に該当する建築物と判定されたということになり、開発許可申請または建築許可申請を行います。
開発許可申請および建築許可申請については次で解説します。
開発許可申請
開発許可申請は都市計画法第29条の許可であり、建築に先立って土地を掘り起こして整備する開発行為がある場合に必要です。
また、自治体において開発に関係する部署が集まり行う開発許可の事前協議があります。
事前協議では開発許可の申請に先立ち、審査および協議が行われます。
そもそも開発許可が必要ない場合は、そのまま建築許可申請に進むこともあります。
建築許可申請
建築許可申請は、開発行為がない都市計画法第43条の許可です。
開発許可を受けて開発行為が完了した後に建築許可申請を行います。
また、計画の内容によっては開発許可や建築許可の前に開発審査会が開かれることがあり、あらかじめ開発審査会の議決をします。
市街化調整区域の土地を購入する際の注意点
市街化調整区域の土地を購入する際には様々な問題が発生します。
ここでは、土地を購入する際の注意点について解説します。
地目の確認をする
土地の売主と買主が確認しなければならない項目は、その土地の地目(ちもく)についてです。
地目とは、土地の現状や使用目的などによってその種類を示す分類名のことを指します。
不動産登記法により、土地の登記事項証明書に記載される情報の一つで、現在は全部で23種類あります。
特に地目が農地の場合は、農地転用の許可が必要になるので注意しましょう。
特約の設定の確認をする
市街化調整区域の土地購入時に特約の設定が必要な場合があります。
その土地での建築が可能であると分かっていたとしても、売買契約時に特約を盛り込むことをおすすめします。
例えば「◯年◯月◯日までに建築許可を取得できない場合は、契約を解除する」といった内容の特約を盛り込んでおくと良いでしょう。
市街化調整区域の物件を取り扱っている仲介会社を選んでおけば、特約について適切なアドバイスを得られて安心です。
将来法改正される可能性を考慮する
現在開発許可を得られている場合でも、将来法改正される可能性もあるので、ずっと許可が得られるとは限りません。
実際に、都市計画法の一部改正によって、2022年4月1日以降は市街化調整区域において災害のリスクが高いと判断されたエリアでは開発行為を原則認めないことになりました。
都市計画法一部改正の背景となっているのは、降水量の増加や海面の上昇による水害の被害が頻発していることが挙げられます。
※2022年10月時点での情報です。
住宅ローンが通りにくい
市街化調整区域の土地は様々な制限が多く、市街化区域よりも土地の値段が安いです。
住宅ローンを組みたい場合、土地の担保としての価値が低いということで審査が通りにくいことがあります。
市街化調整区域のメリットについて
ここでは、市街化調整区域に家を建てるメリットについて解説していきます。
安い価格で土地を購入しやすい
市街化調整区域の土地は、市街地から離れた場所に位置するため土地の価格が安く、価格に対して土地が広くなります。
土地の価格は、需要と供給によって成り立っていますが、市街化調整区域の土地は需要が限定的です。
土地を取引する際にも、農地や更地での取引がほとんどであるため、その土地の用途も限られます。
固定資産税などの税金が安い
市街化調整区域の土地は評価額が低く、固定資産税を節約することができます。
そして、市街化調整区域では都市計画税がありません。
納める税金が安くなるということは大きなメリットとなるでしょう。
静かな環境で過ごせる
市街化調整区域には大規模な商業施設やビルが建たず、隣家と密着していないので騒音で悩まされる可能性が低いのもメリットになります。
静かな環境で暮らしたいという方にはおすすめです。
市街化調整区域のデメリットについて
反対に市街化調整区域で家を建てる際のデメリットについても解説していきます。
改築や建て替えに許可が必要
市街化調整区域では開発許可の制限が厳しく、家の改築や建て替えには自治体の許可が必要になります。
中古の物件を購入して手を加えたいと考えていても、開発許可が下りないため自由に工事を行うことができない場合があります。
開発許可の規定については、各自治体によって異なるため事前に確認しておきましょう。
インフラ整備が不十分な場合がある
市街化調整区域は、本来街を作る目的がないため、下水道や都市ガスなどのインフラ整備が十分になされていない場合があります。
インフラを整備するには自費で行わなければならないことを把握しておきましょう。
土地の市場価格が安い
市街化調整区域の土地の価格は市街化区域と比べるとかなり安いです。
そのため、開発許可に関する制限が多く、土地を担保にする価値が低いために住宅ローンの融資が下りにくいなどの事情によって土地の売却が困難になることがあります。
市街化調整区域で住宅ローンを利用する際の注意点
市街化調整区域で住宅ローンを利用する際の注意点について解説します。
住宅ローンの利用は難しい
金融機関は住宅ローンとしてお金を貸し出す際に不動産を担保にしています。
しかし、市街化調整区域の土地建物は担保としての価値が低いため、住宅ローンの審査対象外としている金融機関があることを認識しておいてください。
以上のことから、市街化調整区域で家を建てる際に住宅ローンの利用は難しくなります。
住宅ローンの審査結果を工事請負契約の停止条件としておく
工事請負契約とは、住宅ローンの審査結果に通った後に施工会社と交わす契約のことです。
市街化調整区域で家を建てる場合は住宅ローンの審査が通りにくいため、施工会社との工事請負契約書を交わす際には停止条件付工事請負契約にしておきましょう。
この契約であれば、住宅ローンの審査が通らなかった場合、契約内容を変更することができます。
施工会社と工事請負契約を交わす前に、停止条件に住宅ローンの審査結果が盛り込まれているかどうか確認しておきましょう。
市街化調整区域の既存宅地で建て替える場合の注意点
市街化調整区域にある中古住宅を購入し、建て替えやリノベーションを行う場合でも、都市計画法第34条の許可を受ける必要があります。
ただし、区域の区分を決定する線引きの日以前に建築された建築物の場合、同一の敷地、規模、用途であれば、原則として建て替えが可能です。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
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この記事の監修者プロフィール
2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。
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