2024年11月21日更新

監修記事

市街化調整区域で家を建てるための条件と許可申請の手順とは?

市街化調整区域というエリアがあることをご存知でしょうか。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、このエリアで暮らしたいという方もいらっしゃいます。本記事では市街化調整区域で家を建て替える方法をご紹介します。

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市街化調整区域とは

市街化調整区域とは、都市の無秩序な拡大を防ぐために指定された区域です。都市計画法に基づき、都市化の抑制を目的としています。

この地域では原則として新しい建物の建築が制限されており、特定の条件を満たさない限り、家を建てられません。

具体的には、以下のように規定されています。

【都市計画法第7条3項】

第七条3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法第7条(区域区分)3項

たとえば東京都では農地を保持するための住宅や、特定の業務に従事する者の住宅に限り許可されることがあります。

市街化調整区域は農地や自然環境の保全に重点が置かれることが多く、住環境の整備よりも農業や林業などの維持が優先される地域としての役割があるのです。

>>市街化調整区域で家を建て替えるメリットはこの記事で紹介

市街化区域とは

市街化区域は、市街地として整備が進められることを目的とした区域です。

この地域では都市計画に従って、住宅や商業施設の建設が積極的に行われています。

具体的には、以下のように規定されています。

【都市計画法第7条2項】

市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法第7条(区域区分)2項

市街化区域では、インフラが整備されており、家を建てるための建築制限も市街化調整区域に比べて緩やかです。

都市の発展を推進するための地域として、利便性が高く、居住用の土地としても需要が高いという特徴があります。

市街化調整区域に住宅を建てられる条件

原則として市街化調整区域内に住宅を建てることは制限されていますが、特定の条件を満たす場合には、例外的に開発を許可されることがあります。

条件は、以下の通りです。

  • 農林漁業を営む者の居住用として家を建てる
  • 住宅兼店舗としての家を建てる
  • 分家住宅として家を建てる
  • 既存住宅を建て替える形で家を建てる
  • ディベロッパーが開発許可を取得した土地で家を建てる
  • 立地条件を満たした土地で家を建てる

では一つずつみてみましょう。

農林漁業を営む者の居住用として家を建てる

農林漁業を営む者が市街化調整区域内に住宅を建てる場合、都市計画法第29条第2号に基づき開発許可が下りることがあります。

【都市計画法第29条(開発行為の許可)】

二市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法第29条(開発行為の許可)

具体的には、以下の条件を満たす必要があります。

農家経営耕地面積が10アール以上の農業を営む世帯、または農産物販売金額が年間15万円以上の世帯
林家保有山林面積が1ヘクタール以上の世帯
漁師満15歳以上で過去1年間に漁業の海上作業に30日以上従事した者

ただし、農地の転用には農地法の規制が適用されるため、必要な手続きを事前に確認することが重要です。

住宅兼店舗としての家を建てる

市街化調整区域内に住宅兼店舗を建てる場合、都市計画法第34条第1号に基づき開発許可が下りることがあります。

【都市計画法34条1号】

一 主として当該開発区域の周辺の地域において居住している者の利用に供する政令で定める公益上必要な建築物又はこれらの者の日常生活のため必要な物品の販売、加工若しくは修理その他の業務を営む店舗、事業場その他これらに類する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法34条1号

この許可が下りるためには、以下の条件を満たす必要があります。

条件項目内容
地域の住民のための必要性地域住民の日常生活に必要な物品の販売や修理、加工などを行う店舗であること
店舗の主目的店舗が主目的であり、住宅はその補助的な機能として存在するこ

たとえば、地元の農産物を販売する店舗と住宅を兼ねる形態などが該当します。

申請時には、店舗の必要性や地域への貢献度を具体的に示すことが求められます。

自治体によって求められる店舗の種類や基準が異なるため、事前に確認することが重要です。

分家住宅として家を建てる

市街化調整区域内で分家住宅を建てる場合、都市計画法第34条第12号に基づき開発許可が下りることがあります。

【都市計画法34条12号】

十二 開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法34条12号

分家住宅とは、本家から分かれて新たに建てられる住宅で、以下の条件を満たす必要があります。

条件項目内容
世帯の関係性分家となる者は本家世帯と同一世帯、またはかつて同一世帯だった者であること
土地の所有状況分家住宅を建てる土地は、本家が所有していた土地から相続、贈与、または使用貸借により取得されたものであること
土地の敷地面積原則として150平米以上400平米以下であること
他地域での住宅所有分家となる世帯が、市街化調整区域外に住宅を所有していないこと
土地の所有権取得分家となる者が土地の所有権(使用貸借を含む)を取得していること
開発許可の取得開発許可または建築許可を受ける際に、開発審議会の審議を経ていること

とくに、家族構成の変化や土地の継承に伴う住宅建築の場合に適用されることが多くあります。

既存住宅を建て替える形で家を建てる

既存住宅を建て替える場合、旧既存宅地制度を利用できます。

この制度は2001年に廃止されましたが、特定の条件を満たす場合、自治体の判断により建築が認められることがあります。

主な条件は以下の通りです。

条件内容
既存の宅地であること建て替え対象の土地が線引き前から、すでに宅地として登録されていたこと
自治体の判断自治体が旧既存宅地制度の要件に該当すると判断した場合
建築の必要性既存住宅の老朽化などにより建て替えが必要であること

旧既存宅地制度を利用する場合、まず自治体に確認し、具体的な手続きを踏む必要があります。自治体によって判断基準が異なるため、事前の相談が不可欠です。

ディベロッパーが開発許可を取得した土地で家を建てる

大手ディベロッパーが市街化調整区域内で開発許可を取得し、住宅建築のために分譲した土地に住宅を建てる場合、通常の個人による建築よりも許可が得やすくなります。

具体的な理由は以下の通りです。

理由内容
大規模開発の正当性ディベロッパーによる大規模な開発は、行政との連携のもと行われ、市街化調整区域内でも正当な理由があれば許可が下りやすい
宅建業法の遵守個人ではなくディベロッパーが土地を分譲するため、法的な手続きを適切に行うことが可能
インフラ整備の一環ディベロッパーによる開発は、インフラ整備や地域活性化の一環として認められる場合が多い

立地条件を満たした土地で家を建てる

都市計画法第34条第11号に定められた立地条件を満たす土地であれば、住宅を建てられます。

都市計画法 第34条

十一 市街化区域に隣接し、又は近接し、かつ、自然的社会的諸条件から市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる地域であつておおむね五十以上の建築物(市街化区域内に存するものを含む。)が連たんしている地域のうち、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県(指定都市等又は事務処理市町村の区域内にあつては、当該指定都市等又は事務処理市町村。以下この号及び次号において同じ。)の条例で指定する土地の区域内において行う開発行為で、予定建築物等の用途が、開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障があると認められる用途として都道府県の条例で定めるものに該当しないもの

引用元:e-Gov法令検索-都市計画法34条11号

具体的な条件を以下にまとめましたので、参考にしてみてください。

条件内容
市街化区域への隣接建築予定地が市街化区域に隣接または近接していること
一体的な日常生活圏の構成自然的・社会的条件から、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していること
建築物の連たん数周辺に50軒以上の建築物が連たんしていること
環境保全上の基準予定建築物の用途が、環境保全上問題とならないこと
自治体の条例による指定都道府県の条例で指定された地域内であること

この「50戸連たん」制度は、地域の一体性を保ちつつ、必要な住宅建築を許可するための基準です。近年ではコンパクトシティ構想との調整から、この制度を廃止する自治体も増えています。

そのため、対象となる自治体の最新の条例や基準を確認しましょう。

50戸連たんとは

50戸連たんとは、市街化調整区域内で、建築基準に基づいて敷地間の距離が50m以内で50戸以上の建物が連なっている地域のこと。

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市街化調整区域で家を建てるまでの許可申請の手順

田畑が豊かな土地
田畑が豊かな土地

市街化調整区域で家を建てるまでの許可申請手順は以下の通りです。

  1. 自治体に相談、申請
  2. 必要書類の提出
  3. 自治体の審査・協議
  4. 通知書の発行
  5. 建築許可申請

一つずつの手順を詳しくみてみましょう。

1 自治体に相談、申請

市街化調整区域に家を建てるには、まず自治体への相談が必要です。

市街化調整区域では一般的な建築が制限されているため、地域ごとに異なる建築条件や許可基準を確認しなければなりません。

自治体によっては、例外的に許可が下りるケースもあるため、事前に十分な情報収集が重要です。

相談後、建築計画の概要を申請書として提出し、初めて許可申請のプロセスがはじまります。

2 必要書類の提出

自治体への相談後、次に以下のような必要書類の提出が求められます。

必要書類
主要書類・許可申請書(正副)
・ 土地の登記事項証明書
・ 位置図
・配置図
・平面図
・ 公図の写し
・ 自己用住宅を建築する理由書
土地関連・土地所有権等の取得状況を示す書類(贈与契約書、売買契約書など)
・ 地積測量図
設計関連・現況図及び造成計画図
・土地利用計画図
・立面図
・汚水
・雑排水施設計画図
個人情報・世帯全員の住民票謄本
・現住居の状況がわかるもの

これらの書類は、土地の特性や使用目的に応じて異なるため、自治体の指示に従って準備することが大切です。

とくに、農地転用が必要な場合や立地条件が厳しい場合には、より多くの書類が必要になることもあります。

3自治体の審査・協議

提出された書類は、自治体による審査と協議を経て検討されます。

建築が地域環境やインフラにどのように影響を与えるかが評価され、自治体の基準を満たしているかどうかが確認されるのです。

土地が農地や自然保護区に該当する場合、より厳格な審査が行われやすいです。

この段階で、追加の条件が提示されることもあるため、計画の柔軟な対応が必要です。

4通知書の発行

審査・協議の結果、自治体から建築許可の可否に関する通知書が発行されます。

この通知書は、正式な建築許可申請の前提となるものであり、建築の準備が整っていることを示します。

通知書が発行された場合、指定された条件に従って計画を進めることが可能です。

条件が満たされなかった場合は、再度計画を見直す必要が生じることもあります。

5建築許可申請

最後に、通知書を基に正式な建築許可申請をします。

建物の設計や工事計画の詳細が提出され、最終的な許可を得るための手続きが進められ、許可が下りれば、ようやく市街化調整区域での家の建築が可能となるのです。

インフラ整備や土地の状況に応じた対応が必要となるため、計画をしっかりと練ることが求められます。

市街化調整区域の調べ方

市街化調整区域に家を建てる際、まずはその土地がどの区域に該当するか確認する必要があります。

市街化調整区域かどうかは、自治体が発行している「都市計画図」や「土地利用計画図」から確認可能です。

一番お手軽な方法はインターネットで【自治体名 都市計画図】と検索する方法です。

多くの自治体で都市計画図を公開しているため、容易に確認できます。

また、自治体の窓口で確認したり、地元の不動産業者に相談したりするのも一つの方法です。

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市街化調整区域に建て替える場合の注意点

市街化調整区域に建て替える場合の注意点は、以下の通りです。

  • 市街化調整区域だと住宅ローンが組みにくい
  •  一旦更地にすると再建築しにくくなる

一つずつ詳細をみてみましょう。

市街化調整区域だと住宅ローンが組みにくい

市街化調整区域では、住宅ローンの審査が厳しくなりがちです。

将来的に土地の需要が低いと見なされることが多く、担保価値が低いためです。

とくに市街化区域に比べて金融機関の評価が低くなり、融資額が下がる可能性もあります。

事前に複数の金融機関に相談し、ローン審査が通るか確認することが大切で、ローン以外の資金調達方法を考えておくこともリスク回避につながります。

一旦更地にすると再建築しにくくなる

市街化調整区域で一旦家を取り壊して更地にしてしまうと、再建築が難しくなることもあります。

区域内で新たに建築許可を取得するのが難しいためです。

用途が厳しく制限されている場合や、建築条件が変更された場合には再建築が不可能になるリスクもあります。

建て替えを考える際には、必ず事前に自治体へ確認し、許可の取得状況や条件を確認することが必要です。

取り壊し前に自治体の指導を仰ぐことで、トラブルを未然に防げます。

Q&A 調整区域への建て替えで良くある質問

市街化調整区域の土地は買わない方がいい?

市街化調整区域の土地は、建築に厳しい制限があるため、慎重に検討しましょう。

市街化調整区域で住宅を建てて後悔しやすいポイントは?

上下水道や電気やガスといった基本的なインフラが整備されていなかったり、商業施設や公共交通機関が少なかったりすることで、生活が不便と感じることです。

市街化調整区域の地目変更は可能?

市街化調整区域の地目変更は、可能ですが非常に難しい手続きです。

地目(ちもく)とは

不動産登記法で決められている土地の種類のことで、田・畑・宅地など、全部で20種類以上あります。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】加藤 諒

株式会社ライフアドバンス

加藤 諒

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