2024年04月11日更新

監修記事

市街化調整区域は地目が宅地でも建築に制限がある?必要な手続きは?

市街化調整区域は新しく建物を建てたり、建て替えをするために制限がかかってきてしまう区域のことです。それでも市街化調整区域で理想の土地を見つけて建物を建てたい方やすでに市街化調整区域にある家を建て替えたい方もいらっしゃると思います。ここでは、どのようにして市街化調整区域を活用していくのか、その手続きや注意点について解説していきます。

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理想としている土地を見つけたけど、市街化調整区域だった。

市街化調整区域に家があるけど建て替えをしたい。

このようなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

市街化調整区域では建物を新しく建てる際や、建て替えを行う際に制限がかかってきてしまいます。

この記事では、どのような制限がかかってくるのか、どのような条件を満たせばいいのかなど市街化調整区域を有効に活用するための方法について解説していきます。

市街化調整区域のメリット・デメリットや注意点などについてもご紹介していきますので、土地の購入に迷われている方などもぜひご参考ください。

市街化調整区域とは

市街化調整区域とはどのような土地かについて見ていきます。

都市計画法で定められた3つの区域区分

家を建てる際は、どこに何を建ててもいいというわけではありません。

国や地方自治体がどこをどのような街にするか計画し、その制限の中で住宅などを建てることになります。

都市計画は都市計画法に基づいて行われており、この都市計画において日本の国土は大きく「都市計画区域」「準都市計画区域」「両区域外」に分けられます。

都市計画区域は各都道府県によって定められ、この区域では国がしっかりと管理するために規制などがかけられます。

準都市計画区域は、都市計画区域ほど規制をかけて管理は行わないエリアです。

両区域外は無人島や山奥など、人が住むには適していないような地域になります。

都市計画区域はさらに「市街化区域」「非線引区域」「市街化調整区域」の3つに分けることができます。

市街化区域は人が住みやすいように計画的に市街化を図っていく地域のことで、家なども建てることができます。

市街化調整区域は都市の市街化を抑制する区域で、原則として家を建てることは難しいエリアです。

基本的に建物を建てるには制限がかかり、許可も必要になってきます。

非線引区域は上記のような区域区分がまだされていない、市街化を推進しようとも抑制しようとも定まっていない地域になります。

区分区域 住宅の建設
市街化区域
市街化調整区域
非線引区域

市街化調整区域における建築への制限

市街化調整区域では、原則人が住むための住宅や商業施設などの建設は認められていません。

地方自治体に許可を得ることができれば、建設や建て替えなども可能ですが、その際にも広さや土地利用には制限がかかってきます。

条件や制限などは地方自治体ごとに変わってきます。

市街化調整区域の調べ方

その地域が市街化調整区域かどうかを調べたい時には、市町村の都市計画に問い合わせる方法や「市町村名+市街化調整区域」とインターネットで検索することで調べることができます。

正確な住所がわかる場合には、市町村の都市計画課などで問い合わせるといいでしょう。

市街化調整区域に住むメリット

市街化調整区域に住むメリットについて見ていきましょう。

土地が安い

市街化調整区域の土地は、市街化区域と比べて安く購入することができます。

具体的には市街化区域の1/3程度の価格で、場所によっては1/10ほどで購入することも可能です。

土地の価格が安い分、建物にお金をかけたり、ガレージ付きの大きな庭付きの家にしたりなど理想を詰め込んだマイホームの実現も可能でしょう。

固定資産税が安い

市街化調整区域では固定資産税などの税金を抑えることができるという点もメリットです。

土地にかかる税金はその土地の評価額によって決まりますが、市街化調整区域の土地の場合、建築に制限があったり、元々の土地の価格が安い点などから評価額自体が低くなるため、固定資産税もその分安くなります。

また市街化区域では固定資産税に加えて都市計画税が微収されますが、市街化調整区域では都市計画税がない点もメリットと言えるでしょう。

静かな環境で暮らせる

市街化調整区域には、大きなビルや商業施設などがありません。

そのため人や車の往来も少なく、静かな環境で暮らすことができます。

また地方自治体ごとに1つの敷地に対して最低敷地面積を設けているため、隣家との距離もあり、生活音などで近隣トラブルなどに悩まされることもないでしょう。

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市街化調整区域に住むデメリット

市街化調整区域に住むデメリットについて見ていきましょう。

新築の他、改築や建て替えでも許可が必要

市街化調整区域では新しく建物を建てる時だけでなく、改築や建て替え時にも許可が必要になります。

もともと市街化調整区域に建っている中古物件を購入した場合でも、自由に改築や建て替えをすることができません。

また許可を得ることができたとしても制限があるため、思い通りに工事を進めることができるとは限りません。

売却が難しい

市街化調整区域は様々な制限がかかることに加えて、住宅ローンが通りにくい生活上不便な立地にあることが多い点などから、土地としての需要が小さいです。

そのため、売却しようとしてもなかなか買い手が見つからなかったり、売却できたとしても土地の市場価格自体が安いため、安価での取引になることが多い傾向にあります。

住宅ローンが通りにくい

不動産を購入する際には住宅ローンを利用することがほとんどかと思います。

しかし市街化調整区域の場合、金融機関によっては住宅ローンの対象外となっていることがあります。

金融機関は住宅ローンの返済が滞ってしまった場合などに備えて、お金を貸し出す際に担保として不動産に抵当権というものを設定します。

市街化調整区域の土地は評価が低いことから、住宅ローンの担保としての価値を満たせないことが多いのです。

市街化調整区域を対象としている場合でも、住宅ローンの審査が通りにくいことがほとんどです。

インフラの整備が遅れやすくなる

市街化調整区域は人が住むことを前提としていないため、インフラ整備が整っていないケースが多くあります。

仮にインフラ整備が必要な場合、基本的に費用は自己負担となります。

そのため土地をせっかく安く購入できたとしても、インフラ整備に高額な費用がかかってしまう可能性が高いのです。

市街化調整区域の土地や不動産の購入を考えている場合には、事前にどの程度インフラが整っているのか、どれくらい自己負担が必要になるのかを確認するようにしましょう。

市街化調整区域に家を建てるための条件

市街化調整区域に家を建てる際には、都市計画法34条に定められている基準を満たせば許可が下ります。

都市計画法34条の内容

市街化調整区域内で開発許可される開発行為は以下のとおりです。

  • 都市計画法第34条:第2種特定工作物(ゴルフコース、1ha以上のグラウンドや墓苑など)
  • 都市計画法第34条1号:周辺居住者の日常生活に必要な店舗・事務所および社会福祉施設・医療施設・学校などの公益上必要な建築物
  • 都市計画法第34条2号:市街化調整区域内の観光資源等の有効活用に必要な建築物
  • 都市計画法第34条3号:温度・空気等について特別な条件が必要なため、市街化区域内での建築が困難な建築物
  • 都市計画法第34条4号:農林魚業用または農林水産物の処理・貯蔵・加工用の建築物
  • 都市計画法第34条5号:中山間地の農林業の活性化基盤施設の建築
  • 都市計画法第34条6号:中小企業の事業共同化または工場・店舗等の集団化に寄与する建築物
  • 都市計画法第34条7号:市街化調整区域内の既存工場と密接に関連し、効率化に必要な建築物
  • 都市計画法第34条8号:危険物の貯蔵・処理用の建築物などで、市街化区域内での建築が不適当な建築物
  • 都市計画法第34条9号:全各号に規定するほか、市街化区域ないでの建築が困難または不適当な建築物
  • 都市計画法第34条10号:地区計画または集落地区計画で定められた内容に適合する建築物
  • 都市計画法第34条11号:市街化調整区域に隣接または近接し、市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している地域で、おおむね50以上の建築物が連担している地域のうち、条例で指定する区域内での開発行為で、予定建築物の用途が環境の保全上支障ないもの
  • 都市計画法第34条12号:周辺の市街化促進の恐れがなく、市街化区域内ではこんないまたは著しく不適当な開発行為として、都道府県の条例で、目的または予定建築物の用途を限り定めたもの
  • 都市計画法第34条13号:自己の居住・業務用建物を建築する既存の権利にもとづき行う開発行為
  • 都市計画法第34条14号:上記のほか、市街化促進のおそれがなく、市街化区域内では困難または著しく不適当な開発行為で、開発審査会の許可を得たもの

家を建てるための基準

家を建てる際に該当する開発行為には第11〜14号があてはまります。

市街化調整区域で家を建てるための具体的な方法としては、

  • 開発許可が不要な建物を建てる
  • 宅地利用が認められた土地で一定の建物を建てる
  • 開発業者が開発許可を取得した土地上で建てる
  • 立地基準を満たした土地の上に建てる

の4つが挙げられます。

開発許可が不要な建物の具体例としては農林漁業を営む人の居住用建築物です。

農家の人であれば、自宅を建てることが可能です。

すでに建物が建っている土地は宅地利用が認められています。

そのため宅地利用が認められている土地であれば、制限はありますが家を建てることが可能です。

市街化調整区域でも開発業者が開発した分譲住宅地などがあります。

このような土地は開発業者がすでに開発許可を得ているため、後から購入した一般の個人でも家を建てることが可能です。

また、市街化調整区域でも都市計画法第34条11号に定められている立地基準を満たす土地であれば家を建てることができる可能性が高いです。

開発審査会の許可を得たものとの記載があるとおり、都市計画や自治体によって詳細な要件などは異なってきます。

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市街化調整区域に家を建てる際に必要な手続きと注意点

許可を得るための必要な手続き

まず家を建てるための許可を得るためには、自治体に相談する必要があります。

自治体ごとによって手続きの流れや方法などは異なってきますが、基本的にまず相談してから事前相談書を提出します。

事前相談書では、開発・建築計画の内容、所在地、面積、土地の所有者などの情報を記載します。

事前相談書の判定の結果、許可が不要となった場合には、建築しようとしている建物が法令に適合しているかの確認を受ける建築確認の申請に進みます。

許可が必要となった場合には、開発許可申請・建築許可申請を行い、開発審査会が行われ議決します。

地目によっては別の手続きの必要になるので注意

土地には地目が設定されていますが、地目が宅地ではなく農地などの場合には別の手続きが必要になります。

農地などに建物を建てるためには、まず宅地に地目を変えなければなりません。

地目の変更には転用申請許可書を提出するなど、別途で手続きが必要になるので注意しましょう。

また農振地域に指定された農地に関しては原則として農地の転用が認められていないため、農地の転用を考えている際には、まず農振地域に指定されているかどうかの確認も行いましょう。

地目とは何か

地目とは土地の現状や使用目的などによって、その種類を示すための分類名のことを言います。

地目にはどのような種類があるのかについて見ていきましょう。

地目の種類

地目は法律上23種類に分けられています。

宅地 建物の敷地およびその維持若しくは効用を果たすために必要な土地
農耕地で用水を利用して耕作する土地
農耕地で用水を利用しないで耕作する土地
牧場 獣畜を放牧する土地
原野 耕作の方法に寄らないで雑草・灌木類の生育をする土地
塩田 海水を引き入れて塩を採取する土地
鉱泉地 鉱泉の湧出口およびその維持に必要な土地
池沼 灌漑用水でない水の貯留池
山林 耕作の方法に寄らないで竹木の生育をする土地
墓地 人の遺骸、遺骨を埋める土地
境内地 社寺の境内に属する土地
運河用地 運河法第12条第1項第1号または第2号に掲げる土地
水道用地 給水の目的で敷設する水道の水源地、貯水池、濾水場、そく水場、水道線路に要する土地
用悪用地 灌漑用または悪水排泄用の水路であり、耕地利用に必要な水路
ため池 耕地灌漑用の用水貯溜池
防水のために築造した堤防
井溝 田畝(でんぽ)または村落の間にある通水路
保安林 森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地
公衆用道路 一般交通の用に供する道路
公園 公衆の遊楽のために供する土地
鉄道用地 鉄道の駅舎、付属施設および路線の敷地のすべて
学校用地 校舎、附属施設の敷地および運動場
雑種地 以上22の地目のどれにもあてはまらない土地

地目は家づくりに活かせる

土地の種目のうち、住宅を建築できるのは、宅地・山林・原野・雑種地の4つです。

田と畑については転用が可能であれば、住宅を建設することができます。

所有地の地目は土地の登記簿を確認することで確認可能です。

地目を見れば、家を建てられる場所なのかどうか、家を建てるのに向いている場所なのかどうかを知ることができます。

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市街化調整区域は地目変更ができるのか

市街化調整区域の地目変更は可能

市街化調整区域でも地目を変更することは可能です。

登記簿謄本の地目と固定資産税評価証明の地目を確認して、どちらかが宅地だった場合には地目を変更できる可能性が高いです。

どちらも宅地以外の場合には、地目を変更するための難易度が高くなります。

また開発許可を受けて宅地開発する方法もあります。

市街化調整区域であっても、要件を満たし開発許可を得ることができれば建物を建てることが可能です。

地目変更のタイミングと流れ

地目は現在の土地の用途を示すもののため、家を建てる前に地目を変更することはできません。

整地を行い建物の基礎工事がされ、近いうちに建物が立つことが見込まれる場合に、宅地として認められ地目を変更することができます。

そのため、市街化調整区域で宅地に地目を変更する場合には、まず自治体に建物を建ててもいいという許可をもらう必要があります。

自分で地目変更をする手続きは、土地を管轄する法務局から地目変更登記申請書をもらい記入し、必要書類を添付して提出します。

法務局では、書類の確認と後日、現地調査が行われ間違いがなければ登記完了書が発行されます。

地目変更にかかる期間は1週間から2週間程度です。

手続きは司法書士や土地家屋調査士に依頼することも可能です。

地目が宅地での建築確認は必要

地目が宅地だったとしても、市街化調整区域では新築、リフォームなどで建築確認が必要になります。

建築確認によって、設計段階つまり工事着手前に規定に適合しているかどうかのチェックを行います。

市街化調整区域は土地活用が難しい

立地が良くない場合が多い

市街化調整区域は多くの場合、市街地から離れているエリアや農地が広がっているエリアにあります。

生活していくためには車が必須になることがほとんどで、スーパーなども近くにないことが多いです。

許可を得て建物を建てたとしても、立地が良くないため利用者を確保できないなどの問題が起こる可能性が高く、土地活用が難しいとされます。

土地活用の方法が限られる

市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域とされているため、原則として建物を建てることが難しいです。

そのため、市街化調整区域にある土地を活用したい場合には、建物を建てない土地活用方法を考える必要があり、土地の活用方法が限られることから、土地活用が難しいとされています。

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市街化調整区域に土地の建て替えはできる?

市街化調整区域にある中古物件を購入し、建て替えやリノベーションを行う場合でも都市計画法第34条の許可を受ける必要があります。

都市計画法が施行される前(線引きの日以前、大部分が昭和43年〜50年の間)からある建築物の場合、今の条件を満たせば基本的に建て替えすることが可能です。

詳細な条件は各自治体によって異なる点もあるため確認が必要ですが、建て替え後も同じ用途であること、敷地の拡大を行わない、または従来の延べ床面積の1.5倍以内であることなどが条件としてあります。

建て替えの条件を満たしていたとしても、一度土地を更地にしてしまうと再建築は難しくなるという点には注意が必要です。

市街化調整区域の土地は売買できるのか

市街化調整区域の土地を売買する際の注意点

市街化調整区域の土地を売却するためには、建築の許可や様々な条件を把握できていないと思うように買主を見つけられなかったり、納得できる価格で売買できない可能性もあります。

また、市街化調整区域の土地を購入する場合にも、後から許可が取れないと判明したなどのトラブルを防ぐためにも売買契約などに特約を盛り込むことが大切になってきます。

市街化調整区域の土地の売買は、通常の土地の売買よりも難易度が高いため、正しい知識を持った専門業者に相談することをおすすめします。

売却しやすい土地・売却しにくい土地

売却しやすい土地 売却しにくい土地
地目が宅地 地目が農地
開発許可がある・開発許可が受けられる 開発許可が受けられない
インフラが整っている インフラが整っていない

まず地目が宅地である土地、開発許可がある土地、また申請者だけでなく第三者でも再建築できる土地などは売却しやすい傾向にあります。

一方で地目が宅地以外である場合や、開発許可を受けることが難しい土地、住宅建築の許可が得られても、申請者のみ、一定の親族のみ、農林水産業の従事者のみなど限定付きの許可の場合には売却がしにくい傾向にあります。

そのほかにもインフラの整備がどの程度整っているかも売却のしやすさに関わってきます。

インフラが整っている土地であれば売買取引には好条件ですが、そうでない場合には土地の評価も落ちると覚えておきましょう。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】久田麻里子

2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。

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