2024年10月17日更新
建築基準法での定義は?二世帯住宅についてわかりやすく解説
デメリットばかりと言われる二世帯住宅ですが、新築時や固定資産税で減税処置を受けられるなどのメリットも多いです。二世帯住宅では建築基準法での定義はなく、扱いは長屋や共同住宅などに分類されます。この記事では二世帯住宅のメリット・デメリット、二世帯住宅で使える減税制度までわかりやすく解説します。
目次
二世帯住宅とは?

二世帯住宅とは、親世帯と子世帯など2つの世帯が生活するために建てられた住宅を指します。
リビングやトイレなど生活空間をすべて共有する場合や、共有スペースを持たずそれぞれ世帯ごとに独立しているなど、スタイルはさまざまです。
ひと昔前では、祖父母と両親、子供夫婦がひとつ屋根の下で暮らすのは珍しくありませんでした。しかし現代では核家族化が進み、親と暮らす家庭は減少傾向にあります。
一方で、家事や育児、介護のしやすさから、二世帯住宅を選ぶ人も多いです。
二世帯住宅は建築基準法で明確な定義はない
二世帯住宅は、建築基準法で明確に定められた定義はありません。
「二世帯住宅」は、もともとハウスメーカーの商品名として使われた言葉だからです。
初めて「二世帯住宅」という言葉が使われたのは、1975年に旭化成ヘーベルハウスのカタログでした。当時のカタログではヘーベルハウスの「二世帯シリーズ」として、1階が親世帯、2階が子世帯の住宅が提案されています。
今では一般的に使われている言葉ですが、建築基準法で明確な定義はありません。
二世帯住宅の種類は建築基準法で3種類定義されている
二世帯住宅の種類 | 定義 |
共同住宅 | ・2戸以上の住宅 ・各戸内に1つ以上の居室、キッチン、トイレ、共用の廊下か階段がある |
長屋 | ・2戸以上の住宅 ・共用部分がない建物 |
一戸建て | ・1戸の住宅に対して1つ以上の居室、キッチン、トイレがある |
二世帯住宅の種類は形状ごとに、共同住宅・長屋・一戸建ての3種類に定義されます。
共同住宅の定義は2戸以上の住宅で、各住戸内にそれぞれ1つ以上の居室・キッチン・トイレ、共用の廊下か階段がある場合です。
長屋は2戸以上の住宅で、共用部分がない建物を指します。
1戸の住宅に対して1つ以上の居室・キッチン・トイレがある場合に分類されるのは一戸建ての住宅です。
二世帯住宅は3つのタイプに分けられる
二世帯住宅は主に以下のタイプに分けられます。
完全分離型 | 各世帯の生活スペースを完全に分けた間取り |
部分共有型 | 一部のスペースを共有し、それ以外のスペースは各世帯で分離した間取り |
完全同居型 | 大半の部分を共有し生活する間取り |
それぞれメリットやデメリットは異なるため、生活スタイルに合わせた間取り選びが重要です。
完全分離型

メリット | ・プライバシーを確保しやすい ・将来は賃貸物件として活用できる |
デメリット | ・建築時の費用が高い ・各世帯の様子がわかりにくい |
完全分離型は1階と2階や、左右で居住スペースを分けるのが一般的です。玄関からそれぞれの生活スペースが異なるため、各世帯の独立性が高いです。
そのため、プライバシーを確保しやすく、お互いに気を使いすぎることも少ないでしょう。また、玄関から分かれているため、親が他界したあとは賃貸物件としての活用も簡単です。
一方、完全分離型は各世帯に必要な設備をそろえる必要があり、ある程度広さも必要です。そのため、建築時にかかる費用は、通常の住宅の2倍かかります。
また顔を合わせる機会が少なく、お互いの体調の変化などに気づきにくい点も注意が必要です。
部分共有型

メリット | ・程よい距離感を保てる ・敷地が狭くても建築しやすい |
デメリット | ・共有部分では気を使う ・費用負担でトラブルになりやすい |
部分共有型は玄関や廊下、水回りなどの一部の生活スペースを共有する間取りです。
親世帯と子世帯で適度な距離を保てるため、各世帯で交流しつつ、ある程度のプライバシーも保てます。
一方、共有部分では顔を合わせるため、お互いに気を使ってしまい、ストレスを感じる場合もあるでしょう。各世帯で生活時間が極端に違う場合も注意が必要です。
また毎月の光熱費は、各世帯どの程度の使用量かを把握するのは難しいため、費用負担でトラブルになるケースもあります。
トラブルを避けるためにも、事前にどのように費用を負担するか話し合っておくのが重要です。
完全同居型

メリット | ・建築費用が安い ・各世帯の様子を把握しやすい |
デメリット | ・プライバシーが確保できない ・生活時間のズレなどでトラブルになりやすい |
完全同居型は、寝室以外の大部分を共有する間取りです。
ほとんどのスペースを共有し、生活をするため各世帯同士のコミュニケーションがとりやすく、体調の変化にもすぐ気づけます。
また、建築時は1世帯分の設備で済むため建築費用を抑えるメリットも大きいです。住み始めてからの光熱費も完全同居型が最も費用を安く抑えるのに適しています。
一方、プライバシーの確保が難しくストレスを感じるケースも少なくありません。お互いの生活時間のズレでトラブルになるケースもよくあります。
完全同居型では、より各世帯の良好な関係が求められるでしょう。
二世帯住宅はデメリットだらけ?
二世帯住宅はマイナス面を指摘される場合が多いです。
たしかに二世帯住宅にはさまざまなメリットがある一方、デメリットになり得る部分もあります。
たとえば、プライバシーの確保が難しかったり、生活時間が合わずにストレスに感じてしまうパターンが多いです。
ここでは二世帯住宅がデメリットに感じる場合をケース別に紹介しましょう。
デメリット① 生活時間のズレがストレスに感じるケース
二世帯住宅は生活時間のズレがストレスに感じてしまうケースも少なくありません。
親世帯と子世帯では、生活スタイルが違います。
たとえば、子世帯は仕事で遅くなることも多く、遅い時間まで起きている場合も多いです。子供がいる場合、お風呂に入る時間が遅くなってしまうこともあります。
逆に親世帯は朝起きる時間が早いなど、お互いの寝ている時間に物音が気になってしまうケースは多いです。
同じ家に住んでいる以上、ある程度は仕方ないですが、お互いの生活時間が違うとストレスを感じる場合があるでしょう。
デメリット② プライバシーの確保が難しくなるケース
二世帯住宅の間取りによっては、生活する上でのプライバシーを保つのが難しくなります。
たとえば、共有スペースが多い間取りだと、どうしても家の中でも顔を合わせる機会が多くなるでしょう。
さらに、一緒に生活しているとつい親世帯が子世帯に世話を焼こうとしてしまったりする場合もあります。逆に子世帯が親世帯に、なにかと心配して口を出してしまうケースも多いです。
気にかけてくれるのはありがたいですが、自分一人の時間が欲しいのに、なかなか一人になれないとストレスになる場合もあります。
デメリット③ 光熱費の管理でトラブルになるケース
二世帯住宅では光熱費の管理でトラブルになるケースもあります。
光熱費は、それぞれメーターを分けて支払うようにしていれば、とくに問題はありません。しかし、それ以外の場合は、世帯ごとの光熱費を把握するのは難しくなります。
たとえば、どちらか一方の世帯が電気やお風呂を頻繁に使う場合、もう一方の世帯が不満に感じるのはよくあるケースでしょう。
光熱費の支払いは一つにまとめている場合、基本料金を一軒分としてコストカットできるメリットもあります。
お金の支払いに関しては言い出しづらい所もあり、不満もたまりやすいため注意しましょう。
デメリット④ 共有スペースの使用時間帯が重なるケース
二世帯住宅では、共有スペースを使用する時間帯が重なるケースも考えられます。
二世帯住宅ではリビングの他、キッチンや浴室、トイレなどを共有にしている場合も多いです。
たとえば洗濯機を使いたい時間帯に使用時間が重なってしまうと、どちらが先に洗濯機を使うか問題になります。ゆずり合う際にも、気を使いすぎて疲れてしまう場合もあるでしょう。
またトイレも家族が増えるほど、自分が使いたいタイミングで使えない機会が多くなり、ストレスに感じるケースが多いです。
デメリット⑤ 売却や相続時にトラブルになるケース
二世帯住宅は売却や相続時にトラブルになるケースも多いです。
たとえば家を売却したいと考えた際、同居する世帯の同意が得られないと売却できません。同居人に反対されて家の売却ができない状況になるのはよくあるケースです。
さらに親が他界した時、親の共有部分は相続の対象です。親が他界した時、兄弟姉妹がいる場合は遺産を巡ってトラブルに発展する場合もあります。
二世帯住宅のメリットは?
マイナス面が指摘されることの多い二世帯住宅ですが、メリットも数多くあります。
たとえば、家族同士での助け合いがすぐにできるのは、大きなメリットだと言えるでしょう。家事や育児をお互いに助け合ったり、生活費を支え合ったりできるのは二世帯住宅ならではです。
親世帯と子世帯で良好な関係を築けていれば、多くのメリットを受けられ、余裕のある生活が実現できます。
メリット① 子育てや家事、介護などを家族同士で助け合える
二世帯住宅の最大のメリットとも言えるのが、家族同士の助け合いができる点です。
子世帯にとって、親に子育てを助けてもらいやすくなるのは非常に大きなメリットになります。
世帯間を移動する手間がはぶければ、その分親に頼りやすくなります。いざという時、子供を預ける際も安心でしょう。
また逆に、親が高齢になり介護する場合も、二世帯住宅の方がいつでも近くで見守れて安心です。
お互いの助け合いができるのは、二世帯住宅で暮らす大きなメリットでしょう。
メリット② 建築時のコストカットにつながる
二世帯住宅は建築時に通常の住宅に比べ、コストカットにつながるメリットがあります。
たとえば、お風呂やキッチンなど必要なスペースを一つにまとめれば、その分コストを抑えられるでしょう。建築時に共有できる部分が多いほど、建物にかかる費用は安くなります。
二世帯住宅は一般住宅に比べ、世帯人数が多い分広さも必要です。そのため、一世帯分の家を建てるより通常は予算が上がります。
しかし、親世帯と子世帯でそれぞれ分担してローンを組むなどすれば、一世帯にかかる費用は少なく済むでしょう。
また二世帯住宅は、親世帯がすでに持っている土地に家を建てる場合も多いです。その場合は建物の建築費用だけで済み、大きくコストカットできます。
メリット③ 生活費を抑えられる
二世帯住宅では管理がきちんとできれば、世帯ごとに負担する生活費を抑えられるメリットもあります。
たとえば、水道や電気のメーターを一つにまとめれば、毎月請求される基本料金は1軒分です。
他にも、インターネット回線などは、一つ契約すれば家族全員で使えます。他にも動画配信サービスなどのサブスクサービスは家族プランを利用すれば、毎月の負担を抑えられるでしょう。
メリット④ 緊急時にすぐに駆け付けられる
家族の緊急時にすぐに駆け付けられるのも二世帯住宅のメリットです。
急な事故や災害時に一緒に生活していれば、すぐに家族の安否確認ができます。家族と離れて暮らしていると、災害時などはすぐに連絡が取れない場合も多く、不安になりやすいです。
いざという時に普段からすぐに家族のもとへ行ける環境は、安心感につながるでしょう。
二世帯住宅の建築費用は?
二世帯住宅の建築費用例 | 2000~3000万円 |
二世帯住宅の建築には、2,000~3,000万円程度の費用がかかります。
ただし、二世帯住宅の規模や使用などによっても異なるため、一概には言えません。
二世帯住宅の建築費用については、ハピすむの記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>>二世帯住宅の建築費用について詳しく紹介している記事はこちら!
二世帯住宅では減税制度がある?
二世帯住宅は以下の通り、さまざまな減税制度が使えるメリットもあります。
- 不動産所得税の軽減措置
- 固定資産税の軽減処置
- 住宅ローン減税
- 相続時に受けられる減税処置
制度を使うためには条件を満たしていると認められなければいけません。軽減処置を受けるためには、「構造上の独立性」「利用上の独立性」を満たしている必要があります。
たとえば、各世帯にそれぞれ玄関・キッチン・トイレがあり、独立して生活できる環境であるなど条件があります。また共有部分の廊下に、鍵付きの扉で仕切りがあるなどの場合も対象です。
それぞれの軽減処置について、詳しく見ていきましょう。
不動産所得税の軽減措置
不動産所得税の計算方法 | (固定資産税評価額-控除額)×3% |
二世帯住宅は条件を満たしている場合、不動産所得税の軽減処置を受けられます。
不動産所得税は、土地や住宅などの不動産を取得した際に収める税金です。
不動産所得税には、50㎡以上240㎡以下の床面積で居宅要件を満たす新築の場合、1世帯あたり1200万円の控除があります。
つまり条件を満たした新築二世帯住宅であれば、2400万円分の控除が発生するのです。
仮に固定資産税評価額が4000万円の物件だった場合、通常の一戸建てに比べ36万円程負担が少なくなります。
固定資産税の軽減処置
土地と建物に対して毎年かかる固定資産税も、二戸分と認定された二世帯住宅は軽減処置の対象です。
土地は通常200㎡までが小規模住宅用地として扱われ、固定資産税が1/6、都市計画税は1/3に軽減されます。
二戸分の二世帯住宅と認定された場合は、400㎡までが小規模住宅用地扱いとなり、その分の軽減処置が適用されるのです。
建物の場合も、通常床面積120㎡分の固定資産税が、新築3年間は1/2に軽減されます。条件に当てはまる場合は240㎡分が対象です。
さらに、長期優良住宅に認定されれば、新築5年間は1/2に軽減されます。
住宅ローン減税
二世帯住宅では要件に当てはまると、住宅ローン控除が各世帯で受けられます。
各世帯で住宅ローン減税を受けるためには、共有登記されていることや床面積が50㎡以上でなければなりません。
さらに、住居部分が床面積の1/2以上であるなどの要件を満たしている必要があります。
相続時に受けられる減税処置
親の他界などで不動産を相続する場合、二世帯住宅の場合要件を満たすと、相続税が減額されます。
要件を満たしている場合は、相続した敷地面積の330㎡までの部分について、相続税の額を80%まで減額できます。
ただしこの減税処置を受けるには、親名義もしくは親子による共有登記が条件です。
完全分離型の二世帯住宅で、親名義と子名義に区分登記されている場合は対象外となるため注意しましょう。
二世帯住宅で使える補助金は?
二世帯住宅で使える補助金制度は、主に以下の3つです。
- 地域型住宅グリーン化事業
- すまい給付金
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
上記で紹介した補助金制度以外にも、市町村で行っている補助金制度が使える場合もあります。
各補助金については、それぞれ制度の内容や条件が定められており、それぞれ当てはまるか確認が必要です。
住宅に関する補助金については、別の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
>>住宅に関する補助金の詳細はこちら!
二世帯住宅を建築する際の注意点
二世帯住宅を建築する際は、いくつか注意点があります。
とくに、一つの敷地上に建物は独立した別棟にする場合や、完全分離型の二世帯住宅は注意が必要です。
ここでは、それぞれの注意点について詳しく紹介します。
完全独立二世帯住宅の場合は接道に注意する

一つの敷地上にそれぞれの世帯を別棟で独立して建てる場合は、接道に注意しなければなりません。
建築基準法には「一つの敷地に一つの用途」という原則があります。
そのため敷地上に独立した住宅を建てる場合は、敷地分割して、それぞれ別敷地として建築確認申請をする必要があります。
敷地分割した後は敷地が道路から奥まった「路地状敷地」になる場合も多いです。
路地状敷地では接道要件を満たすため、接道する通路の幅員を2m以上確保する必要があります。
完全分離型二世帯住宅は「長屋」として扱われる
完全分離型の二世帯住宅は建築基準法で「長屋」として扱われます。そのため、建築基準法上の制限が若干異なる点に注意が必要です。
「長屋」の基準は各自治体によって基準は異なります。しかし、ほとんどの自治体では出入り口が道路に面していない場合、幅員2m以上の通路を確保しなければなりません。
また、玄関から道路までの長さは35m以下とされています。「路地状敷地」の場合は道路から建物の距離が長いと基準を満たせない場合もあり注意が必要です。
さらに完全分離型二世帯住宅で3階建ての場合は、3階の窓に消防のはしご車が寄り付ける「非常用侵入口」が必要などの制限があります。
基本的に「部分共有型」と「完全同居型」の二世帯住宅は、建築基準法上での制限は一般住宅と変わりません。
「完全分離型」は他のタイプより制限が厳しくなるため注意しましょう。
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