2024年12月18日更新
家の境界線「隣地境界線」とは?トラブル例や対策法を解説!
境界線を曖昧にしたまま、建物を建て始めると、建築の中止・変更、損害賠償請求のリスクが高まります。建物を建てる際には、測量や境界標の確認、隣地との話し合いが欠かせません。本記事では、家の隣地境界線について内容を網羅しました。境界線の定義から実際にあり得るトラブルと対策を詳しく紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
隣地境界線とは?
「隣地境界線」とは、敷地と敷地を明確に区分するために引かれた境界線のことです。
土地に記されている境界標や杭などをつないだ線が、隣地境界線に該当します。
また隣地境界線は、以下の2種類に分類されます。
所有権界 | 土地所有者ごとの所有権が接している境界線のこと (ブロック塀や垣根などが設置されていることもあります) |
筆界 | 土地の区画を示す境界線のこと |
次に、所有権界と筆界について詳しく紹介します。
建築基準法上では隣地境界線に関する定義はなく、境界線から50cm以上の距離を確保する必要はありません。
しかし、隣地境界線に沿った建物は、隣家との距離が近くなります。
隣家から室内の様子が見られたり、建物同士で圧迫感が生まれたりするため、民法上の規則を守ることが周辺環境に優れた良い建物につながります。
所有権界の意味
「所有権界」は、土地所有者同士の所有権と所有権がぶつかり合う境界のことを指します。
私法上の境界とも呼ばれており、ブロック塀や構造物を設置して、隣地との境界を定めています。
所有権界は隣地境界線とは異なり、素人では判断しづらい境界線です。
所有権界の未確定はトラブルの原因にもなるため、隣地も含めた土地所有者同士での現地確認のもと、確定することが大切です。
筆界の意味
「筆界」とは、土地の区画を示す境界線のことです。
地図や公図、地積測量図に記されている境界線を指すため、「公法上の境界」と呼ばれています。
当事者立会いのもとで境界線の整理を進め、法務局に分筆登記の申請する必要があるため、筆界の変更には時間を要します。
隣地境界線以外の境界線との違い

隣地境界線以外にも、以下の境界線があります。
- 道路境界線
- 敷地境界線
隣地境界線と混同しないように、1つずつ順番に確認していきましょう。
道路境界線とは?
道路境界線とは、敷地と道路の境界を示す線のことを指します。
原則、建物は道路境界線を越えて、建てることはできません。
庇やフェンス、塀なども建てられないため、注意しましょう。
建築基準法の道路斜線制限とは、道路から発生する架空の斜線のことです。
建物を建てる際には周囲の日当たり・風通しなどを確保するため、架空の斜線を超えないように建築物を設計する必要があります。
用途地域によって、距離の1.25倍または1.5倍の斜線制限が設けられています。
敷地境界線とは?
敷地境界線とは、敷地と隣地の境界を示す境界線のことです。
敷地と道路や河川、公園などの境界も敷地境界線に該当します。
敷地を囲む外周が敷地境界線になるため、道路境界線や隣地境界線なども敷地境界線に含まれます。
隣地境界線は、敷地と隣地の境界を示す境界線のことです。
一方で敷地境界線は、敷地の外周部の境界線を指します。
そのため敷地境界線のなかに、隣地境界線や道路境界線が設けられている形になります。
家の隣地境界線を確認する方法

家の隣地境界線を確認する方法は、以下の4つです。
- 地積測量図を取得する
- 測量を依頼する
- 境界標を目視で確認する
- 筆界特定制度を利用する
順番に紹介していきます。
【方法1】地積測量図を取得する
地積測量図とは、敷地境界線や土地面積を記した測量図のことです。
法務局で手数料を支払うことにより、書類の確認ができます。
最近では法務局に行かなくても、「登記・供託オンライン申請システム登記ねっと 供託ねっと」から地積測量図を取得できます。
地積測量図は土地面積も確認できるため、敷地全体について確認したい場合の取得にもおすすめです。
【方法2】測量を依頼する
測量を依頼することで、敷地境界線の位置や長さや土地の面積を確認できます。
測量方法には、確定測量と現況測量の2種類があります。
確定測量とは、土地の境界を明確にし、境界線を確定させるために実施する測量のことです。
現況測量とは、土地の面積など概要を把握するため、既存のフェンスや塀をもとにおおまかな境界線を明らかにする測量です。
測量の方法や目的が異なるため、場面ごとに適切な測量を行う必要があります。
【方法3】境界標を目視で確認する
敷地境界線が定められている場合、境界標が各所に設けられており、おおまかな境界線を把握できます。
敷地によっては以下のような原因で境界標が移動したり、無くなったりしている場合があるため注意が必要です。
- 地震や土砂崩れなどで境界杭がズレた
- 境界標近くでの工事が行われた
- 境界標の経年劣化
境界標には、十字や矢印が刻まれています。
十字の場合、十字が交わる点が境界点になります。矢印の場合、矢印の先端が境界点です。
刻まれている矢印によって、見方が異なるため、確認時には注意しましょう。
【方法4】筆界特定制度を利用する
筆界特定制度とは、登記上定められている筆界特定登記官が現地で実際に境界の状況を確認し、境界線を明確にする制度のことです。
境界線を早く明らかにしたい場合におすすめで、半年~1年程度で境界線の状況が確認できます。
隣地と敷地境界線について揉めてしまうと、裁判に発展することもありますが、筆界特定制度を利用すれば裁判よりもお金や時間はかかりません。
早々に境界線のトラブルを解決したい場合には、筆界特定制度を活用しましょう。
住宅を建てる際に関係する隣地境界線の決まり

住宅を建てる際、民法によって以下の決まりが定められています。
- 建物外壁と境界線の間は50cm以上離さなければならない
- 境界線から1m未満の窓には目隠しが必須
- 建物間に空き地がある際、塀やフェンスの費用は分担される
民法の内容を破ったまま建物を建てると、建築の中止・変更、損害賠償請求のリスクが高まります。
あらかめ3つの決まりを確認しておきましょう。
建物外壁と境界線の間は50cm以上離す
隣地境界線は、建物外壁から50cm以上離さなければならないという民法上の決まりがあります。
建物を築造するには、境界線から50cm以上の距離を保たなければならない
出典:e-gov-民法234条
民法は建築基準法とは異なり、個人間の同意があれば50cm以上確保する必要はありません。
しかし、建物外壁が隣家と接近してしまうと、窓が設けられなかったり、室外機や給湯器の設置場所が確保できなかったりすることもあるため要注意です。
外壁後退(セットバック)とは、隣地境界線や道路境界線から一定距離、外壁面を後退させる制度です。(参考:建築基準法54条)
民法とは別に外壁後退が定められている地域では、取り決めに則って建築する必要があります。
境界線から1m未満の窓には目隠しが必須
民法235条により、境界線から1m未満の窓には目隠しが必要になります。
1.境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
出典:e-gov-民法235条
2.前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。
隣家との距離が1m未満になると、近隣との距離の近さを感じやすく、互いに落ち着いて生活ができません。
互いに目隠しを設けることで、互いのプライバシーを守れます。
建物間に空き地がある際、塀やフェンスの費用は分担される
建物間に所有者が異なる空き地がある場合、共同の費用で塀やフェンスを建てられます。
1.二棟の建物がその所有者を異にし、かつ、その間に空地があるときは、各所有者は、他の所有者と共同の費用で、その境界に囲障を設けることができる。
出典:e-gov-民法225条
2.当事者間に協議が調わないときは、前項の囲障は、板塀又は竹垣その他これらに類する材料のものであって、かつ、高さ二メートルのものでなければならない。
所有者の異なる空き地で塀やフェンスを建てる際、互いの同意が必要です。
仮に同意が得られない場合は、板塀や竹垣などの素材で2mのものであれば独断で建てられます。
ただし、同意を得られていない状態で進めてしまうと、トラブルに発展しかねないため注意が必要です。
家の隣地境界線が測定できる「境界確定測量」とは

境界確定測量は土地の境界を明確にし、土地面積を確定させるために実施する測量のことで、隣地所有者も立ち合いのもと実施されます。
ここからは、確定測量の費用や必要になる場面、流れについて紹介していきます。
境界確定測量にかかる費用
境界確定測量にかかる費用目安は、以下の通りです。
境界確定測量にかかる費用 | 60~80万円 (一戸建て住宅の場合) |
境界確定測量の費用は、土地の形状や大きさ、依頼先の業者によって異なります。
官有地と民有地を明らかにする官民境界明示が加われば、測量費用は100万円を超えるケースもあります。
費用の相場を知るためにも、まずは2~3社の測量業者に、内容を確認してもらうことからスタートしましょう。
境界確定測量が必要になる場面
境界確定測量が必要になる場面は、以下の通りです。
- 境界標が設置されていない
- 隣地との境界線を明らかにしたい
- 建物を建て替えたり、新築を建てたりする
- 土地売却が必要になった
境界確定測量は、約3か月ほど時間がかかります。
隣地との話し合いが難航すると、さらに時間がかかってしまうでしょう。
建物を建て替えたり、新築を建てたりする際には、遅くとも工事着工までに境界線を明らかにしておく必要があります。
境界確定測量の流れ
境界確定測量の流れについても、確認しておきましょう。
境界確定測量は主に測量業者などが測量して登記を行うため、測量を依頼したの当事者が関与する場面は限られています。
測量の依頼は個人でも依頼できますが、不動産売買の際には不動産業者から間接的に依頼が行われます。
不動産売買の際には契約書に土地面積などを記載するため、それまでの間に測量が行われます。
資料や調査をもとに、仮の境界を起点とした現況測量を行います。
隣地所有者が判明していれば、立会いの連絡を行い、一緒に確認を進めます。
すべての隣地所有者立会いのもと、隣地境界線を確定します。
接している敷地が多かったり、隣地の所有者が複数人いる場合は想定以上の時間を要することになります。
すべての隣地所有者から同意を得たら、決まった境界に境界標を設置します。
新たな境界標を起点に、確定測量を実施することになります。
境界点を記した測量図面に、すべての隣地所有者から署名・捺印をもらい、作成します。
測量・手続きが完了後、確定測量図に境界確認書を添付してします。
家の隣地境界線の立会い時の注意点

隣地境界線を決める際の立ち合いでは、以下の点に注意しましょう。
- 事前に境界の現状を確認しておく
- 隣地境界が分かる資料を揃えておく
- 署名・押印は互いに納得したうえで行う
- 土地所有者本人が立ち会う
1つずつ解説していきます。
事前に境界の現状を確認しておく
事前に境界の現状を確認しておくことで、立ち合い当日に隣地所有者や測量士とスムーズに話が進められます。
以下の3点をチェックしておきましょう!
- 目視で境界標があるか確認する
- 塀やフェンスなどが越境していないか確認する
- 自宅に測量図や公図、謄本があるか確認する
隣地境界が分かる資料を揃えておく
立ち合い当日には、隣地境界が分かる以下の資料を準備しましょう。
- 地積測量図を取得する
- 公図を取得する
- 建物図面を持参する(建物が建っている・建っていた場合)
立ち合い時に必要な書類は、測量士が事前に準備してくれるケースもあります。
しかしもし個人で所有している書類がある場合は、立ち合い時に持参するようにしましょう。
署名・押印は互いに納得したうえで行う
立ち合い後、境界確定図面に署名・押印が必要になります。
署名・押印は書面の内容に合意したという証になるため、しっかり内容を確認してから行いましょう。
少しの疑問点や不安点を残したまま、署名・押印を行うと、納得できないまま境界線が確定します。
隣地と気持ちよく関わり続けるためにも、気になる点は事前に確認しておきましょう。
土地所有者本人が立ち会う
隣地境界線を決める際、土地所有者本人の立会いが推奨されています。
本人の立ち合いが難しい場合、委任を受けた代理人が立ち会うことも可能です。
しかし、立ち合い後に認識のズレや聞き間違いなどが発生すると、トラブルにつながります。
スムーズに境界線の確定を進めるためにも、可能な限り本人が立ち会うことをおすすめします。
家の隣地境界線に関するトラブル例と対策

隣地境界線に関するトラブルの一例をご紹介します。
- 隣家から損害賠償請求をされた
- 隣地の草木が越境している
- 境界標が紛失した
- 建物の位置が隣の敷地に被っていた
- 内積みされているブロック塀を撤去した
隣家から損害賠償請求をされた
隣地境界線から建物が50cm離れていないかつ、隣地の同意が取れていない場合、建築の中止や変更が求められてしまう場合もあります。
1年を経過した場合には、建築の中止や変更を求めることはできず、損害賠償請求のみが可能になります。
隣家から損害賠償請求を行われると、金額決定までの時間と損害賠償請求の支払いが必要になるため、大きな負担につながるでしょう。
後々のトラブルを避けるためにも、隣地からの同意を書面で記載してもらうことが大切です。
隣地の草木が越境している
現地を見ずに土地を購入したら、隣家の草木が敷地に越境している。処理ができないため、対応に困っている。 |
土地購入後、隣地の草木が越境していたという事例も少なくありません。
越境している草木を隣地の許可なく、勝手に切ることはできません。
また、切ってもらうように伝えたとしても、隣地の考え方によっては対応してくれない場合もあります。
建築の際に草木が邪魔になる可能性もあるため、土地購入時には必ず現地確認を行い、隣地と敷地の状況を確認することが大切です。
境界標が紛失した
土砂崩れや洪水、地震といった自然災害により、境界標がズレたり消失したりして、正確な位置が分からなくなった。 |
自然災害や隣地の工事などにより、境界標が紛失するケースも多いです。
境界標が紛失している、紛失していないに関わらず、建物を建てたり、土地を売却したりする場合には新たに測量を行いましょう。
建物の位置が隣の敷地に被っていた
土地を相続して家を建築しようとしたところ、隣地境界線が曖昧で、いざ調べてみたところ土地の一部が隣人の所有地であった。 |
土地購入後、実は建物の位置が隣の敷地に被っていたという事例もあります。
初めての方は測量図や公図などを確認しても、よく分からないことも多いため、土地の一部が隣人の所有地でも気づきにくいです。
このような場合は売り主に売買代金の減額を求められる可能性があるため、なるべく早く手続きを進めるようにしましょう。
Q&A 家の隣地境界線に関するよくある質問
最後に、隣地境界線に関する質問を紹介していきます。
- 境界線がトラブルに発展してしまった場合どこに相談すべき?
-
境界線がトラブルに発展してしまった際、地域の境界問題解決センターや法務局、市役所などの相談窓口を利用しましょう。
窓口の利用により、第三者が介入してくれるため、トラブル解決を冷静に進められます。
境界問題解決センターは、境界線における判決は裁判と同じ効力を持つため、時間やお金をかけられない方におすすめの相談窓口です。
- 境界標はズレていても大丈夫?
-
境界標は地震などの自然災害や近隣の工事によりズレることもあります。
故意にズラすことがなければ、犯罪になることはありません。
- 隣地境界線を守らなくて良いケースある?
-
隣地境界線は隣地との同意を得ていれば、不確定でも問題ありません。
しかし同意があっても口頭での内容は、「言った」「言っていない」のトラブルにつながることもあります。
後々のトラブルを避けるためにも、書面での同意を取っておくことが大切です。
- 家の境界線を調べるときは誰が負担する?
-
境界線の負担者は、境界線を明らかにしたい当事者が負担するのが一般的です。
必ずしも当事者が負担する必要はないため、話し合いで折半になることもあります。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
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後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
2級建築士、インテリアコーディネーター、住環境福祉コーディネーター。ハウスメーカー、リフォーム会社での建築業を幅広く経験。主婦・母親目線で様々なリフォームアドバイスを行う。主な担当は水回り設備リフォーム、内装コーディネート、戸建てリフォームなど。
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