2024年11月07日更新

監修記事

木造3階建て住宅は地震が来ると危ない?倒壊リスクや地震に対する強さ、耐震等級を解説

木造3階建て住宅は地震での倒壊リスクが高いといわれていますが、それほど高くはありません。新耐震基準で建築された3階建て木造住宅は耐震性が強化されており、実際の地震での倒壊率も高くありません。また、木造3階建ては2階建てとは異なり構造計算が義務付けられており、倒壊しにくい設計です。今回は、地震に弱い木造3階建ての特徴と地震による倒壊リスクを下げるための方法を紹介します。1981年前の木造3階建てに住んでいる方は必見です!

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木造3階建ては危ない?地震による倒壊リスク

木造住宅
木造住宅

木造3階建ては「危ない」と思われがちですが、適切に設計・建築されていれば倒壊リスクは高くありません。

では、なぜ木造3階建てなのに倒壊リスクが低いのでしょうか。倒壊リスクが低い理由は以下の2点です。

  • 新耐震基準で建築された木造住宅の倒壊リスクは低い
  • 構造計算がされているので倒壊リスクは高くない

それぞれ詳細を見ていきましょう。

新耐震基準で建築された3階建て木造住宅の倒壊リスクは低い

1981年に施行された新耐震基準は、建物が大地震に耐えられるように設計されています。

2000年にはこれまでの新耐震基準がさらに見直され、耐震性がさらに強化されています。

たとえば、熊本地震での木造住宅の倒壊率からも、新耐震基準の建物の倒壊率の低さを確認することが出来ます。

耐震基準木造建築物の倒壊率
旧耐震基準
(昭和56年5月以前)
28.2%(214棟)
新耐震基準
(昭和56年6月以降)
8.7%(76棟)
現行規定(※2000年基準)
(平成12年6月以降の耐震基準)
2.2%(7棟)
参考元:国土交通省 住宅局-「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会」報告書

熊本地震の場合(平成28年)旧耐震基準の建物の倒壊率が28.2%だったのに対し、新耐震基準の建物は10.9%(うち2000年基準は2.2%)でした。

現行規定の2000年基準とは

2000年6月1日以降に新耐震基準をさらに厳しく改正した耐震基準で、建物全体の耐震性を向上させることが主な目的です。従来の新耐震基準に比べ、以下の点を強化しました。

  • 地盤に応じた基礎設計
  • 基礎と柱の接合部に金具の取り付け
  • 耐力壁のバランスと配置の強化

旧耐震基準と新耐震基準では耐震性能に大きな差があり、新耐震基準で建築された3階建て木造住宅は、倒壊リスクが大幅に低減されました。

新耐震基準と旧耐震基準の違い

以下の表を参考に、旧基準と新基準の違いを見てみましょう。

項目新耐震基準(2000年改定後)旧耐震基準(1981年以前)
基準の概要震度6~7程度の大地震で倒壊しないことが強く求められる震度5強程度の地震で倒壊しないことを前提
建物の設計基準中規模地震で損傷を最小限に抑え、大規模地震でも倒壊を防止部分的な補強が主で、全体的な耐震性の考慮が少ない
耐震等級耐震等級1〜3(1が最低、3が最高)に分けて評価可能等級分けの規定なし
構造計算の義務化すべての建物に構造計算義務が拡大(とくに木造3階建て以上)構造計算は義務ではなく、経験に基づく設計が主流
柱や梁の強度より強い構造材の使用が義務付けられ、接合部の耐力も強化接合部の具体的な強化方法についての規定が少ないため、材料の強度や接合部の耐久性が現在よりも劣る
法律の適用時期2000年6月1日施行1950年の建築基準法制定時から適用
実績東日本大震災や熊本地震で高い耐震性能を発揮阪神淡路大震災で多数が倒壊

新耐震基準では、地震のエネルギーを建物全体で吸収し、倒壊を防ぐ仕組みが取り入れられています。

そのため現行基準に基づいて建てられた木造3階建ては、安全性が高いといえます。

構造計算がされているので倒壊リスクは高くない

木造3階建ては、2階建てとは異なり構造計算が義務付けられています。

構造計算とは、建物が外部の力(地震や風など)にどの程度耐えられるかを数値で確認するプロセスです。

建物の安全性が設計段階から確保され、倒壊リスクを大幅に低減できます。

3階建てでは柱や梁の強度、耐力壁の配置が厳しくチェックされるため、無計画な設計による構造的弱点が生まれにくいといえます。

構造計算が行われている木造3階建ては地震によるリスクが低いといえるでしょう。

地震に強い木造3階建ての特徴

建築中の木造住宅
建築中の木造住宅

地震に強い木造3階建てには、以下4つの共通した特徴があります。

特徴説明
耐震性能3最高等級の耐震性能で、大地震にも耐えられる
構造がシンプル複雑な形状が少なく、耐力が均等に分散される
地盤が強い地震の際に建物が沈下しにくい
制震ダンパー使用建物の揺れを抑え、ダメージを軽減する

これらの要素を備えた建物は、倒壊のリスクが低く、住まいとして安全性が高いとされています。
では、一つずつ見ていきましょう。

耐震性能3を取得している

耐震性能3は、建物の耐震性を示す最高等級です。

耐震性能3を取得している木造3階建ては、大地震に対しても高い耐久性を持っています。

耐震等級3では、震度7クラスの大地震にも倒壊しないことが求められます。

新築時にこの等級を取得することで、地震に対する安全性がいっそう高まり、生活する上で安心です。

耐震等級3の建物は住宅ローンの優遇を受けられることも多く、安心かつお得な対策といえます。

構造がシンプル

複雑な形状や多くの凹凸がある建物は、地震時に揺れが集中し、倒壊リスクが高まります。

シンプルな構造の建物は、耐力壁や梁が均等に配置されるため、揺れを効率的に分散させられます。よって、地震の衝撃に対して強く、建物全体の耐震性が向上するのです。

地盤が強い

木造3階建ての耐震性は建物自体だけでなく、建てられる地盤の強さにも大きく影響します。

強い地盤の上に建設された住宅は、地震時に沈下しにくく、倒壊のリスクが低いです。逆に、弱い地盤の上では、建物が傾いたり沈んだりする恐れがあります。

地震に強い木造3階建てを建てる際には、事前に地盤調査を実施し、必要に応じて地盤改良を施すことが重要です。

制震ダンパーを使っている

制震ダンパーは、建物の揺れを吸収する装置で、地震の際に揺れを大幅に抑える効果があります。

建物全体にかかる力が軽減され、地震による損傷を最小限に抑えられます。

とくに木造3階建てのような高層の建物では、地震時の揺れが増幅しやすいため、制震ダンパーの設置が効果的です。

制震ダンパーを導入することで、建物の耐震性が向上し、安心して暮らせる環境が整います。

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地震に弱い木造3階建ての特徴

ビルトインガレージ
ビルトインガレージ

地震に弱い木造3階建てには、以下3つのリスク要素があります。

特徴説明
ビルトインガレージ1階部分の耐力が不足し、倒壊リスクが高まる
凹凸が多い揺れが集中しやすく、建物全体のバランスが崩れやすい
古い木造住宅耐震基準が低く、現行基準に比べて耐震性が劣る

当てはまる場合は、地震の際に大きな被害を受ける可能性があるため、耐震補強などが必要なケースも多いです。

それぞれを詳しく解説します。

ビルトインガレージがついている

ビルトインガレージ付きの木造3階建ては、耐震性において注意が必要です。

ビルトインガレージは建物の1階部分に空間を作るため、柱や壁の数が減り、耐力が不足しやすくなります。

そのため、地震の際には上層部の重さを十分に支えられず、倒壊のリスクが高まります。

対策としては、耐震補強を行い、柱と梁、柱と土台などの接合部を強化したり、制震ダンパーで建物の変形や損傷をおさえたりする方法が効果的です。

また、事前に耐震診断を行い、必要な補強を検討することが重要です。

凹凸が多い

建物に凹凸が多いと、地震時に揺れが集中しやすくなります。

たとえば、2階以上の部分が1階部分よりも張り出している場合、箱型の建物よりも倒壊しやすいです。

デザイン性を優先しすぎた設計は、ときに耐震性でリスクをともなう場合ががあります。

シンプルな形状にするか、補強工事をするようにしましょう。

古い木造住宅

前述した通り、耐震基準は大幅に改定されており、それ以前に建てられた旧基準の建物は大地震で倒壊する可能性が比較的高いです。

古い木造3階建てを所有している場合は、耐震診断を受け、必要に応じて補強工事をおすすめします。

木造3階建てと鉄骨3階建ての地震に対する比較

補強金物
補強金物

木造は軽量で柔軟性が高く、地震の揺れに対して適応しやすい一方、鉄骨は高い強度を持っています。

鉄骨は木造に比べてコストが高くなる傾向にあります。建物全体の重量も鉄骨の方が重くなるため、地盤への影響も木造に比べて高いのです。

以下に両者の耐震性能、重量、コストなどの違いをまとめました。

項目木造3階建て鉄骨3階建て
耐震性能柔軟性があり、揺れに強い強度が高い
重量軽量で、地盤に負担がかかりにくい重量があり、地盤に負担がかかる
コスト比較的安価木造よりも高コスト
建築スピード工期が短い工期が長くなることがある

木造と鉄骨それぞれに利点と欠点があるため、地盤の強さや予算、建築の目的に応じて選ぶことが重要です。

耐震等級3を取得するのは難しい?

耐震等級3を取得するのは、簡単ではありません。

耐震等級3とは、建築基準法で定められた最高等級であり、数百年に一度の大地震にも耐えることが求められます。

取得するためには構造設計の強化が必要となり、それなりに費用もかかります。

施工面でも厳しい制約があり、複雑な間取りやデザインでは取得が難しく、対応できる施工会社も限られているのが現状です。

耐震等級3の取得には、確かな技術力を持つ業者に依頼を行うことが不可欠です。

信頼できる業者を選び、耐震性を確保するための相談をしっかり行うことが、安心できる生活につながります。

費用がかかる

耐震等級3を取得するには、通常の建築よりも多くの費用が必要です。

たとえば、基礎部分の強化や耐力壁の増設や制震ダンパーなどの導入が必要になり、費用がかさみます。

設計自体にかかる費用も増加しやすく、全体的な予算を大幅に上回る可能性もあります。

施工面での制限がある

大きな吹き抜けや窓を多く設けるデザインなどは、耐震性を損なう可能性があるため、設計段階で調整が必要になります。

構造計算も厳密になるため、デザインの柔軟性が制限されることも考えられます。

耐震性能を優先する場合、設計の自由度とのバランスを取ることに注意しましょう。

対応できる業者が限られる

耐震等級3を取得するためには、高度な技術を持った施工業者が必要です。すべての業者がこの等級に対応できるわけではありません。

木造3階建ての建築では、耐震設計の経験が豊富な業者を選びましょう。

業者の選択においては、耐震工事の実績や建築基準法に精通しているかどうかを確認し、信頼できるパートナーを見つけることが不可欠です。

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木造3階建て住宅で耐震性を高める方法

住宅の基礎
住宅の基礎

構造をしっかり強化するには以下の3つが重要です。

  • 基礎の補強
  • 耐力壁の増設
  • SE構法の採用

それぞれの方法を理解し、適切な対策を取ることで、地震に強い木造住宅を実現できるでしょう。

基礎の補強

基礎の補強は、地震による揺れに耐えるための基本です。木造3階建ての建物は、その重量が基礎に集中するため、地盤との接地面が非常に重要です。

基礎部分を強化することで、地震による水平力や圧力に対して安定した支えを確保できます。

新築の場合、鉄筋コンクリートを使った布基礎や、杭基礎の導入が推奨されます。

基礎を補強することで、建物全体の揺れを効果的に分散させ、倒壊リスクを大幅に低減できるのです。

耐力壁の増設

耐力壁とは、地震の際に建物の揺れを吸収し、建物全体を安定させる壁のことです。

木造3階建ては高さがあるため、地震の揺れが強く伝わりやすくなります。適切な位置に耐力壁を配置することで、揺れを均等に分散させ、倒壊のリスクを抑えられます。

耐力壁には、合板や筋交いがよく使われますが、専門業者と相談して適切な方法を選びましょう。

SE構法の採用

SE構法は、木造住宅の耐震性を飛躍的に高める工法です。

強度の高い構造用集成材を使用し、特殊な金物を用いた接合で、梁と柱の接合部分の強度を保ちます。

柱と基礎を直接結合することで、地震時の引き抜き強度も大幅に向上してより安心です。

また、構造計算を行い、鉄骨造や鉄筋コンクリート造と同様の精度で建物全体の耐震性を最適化できます。

SE構法は木造3階建て住宅の建築を可能にし、高層木造住宅に適した高精度な工法といえます。

Q&A 木造3階建て住宅で良くある質問

3階建住宅は揺れやすいと聞くけど大丈夫?

木造3階建て住宅は、構造上の高さや重量のバランスから地震による揺れが大きくなりがちですが、新耐震基準の場合は構造計算を行っているため、倒壊リスクは低いといえます。

制震性能はどうすれば上がるの?

制震性能を高めるには、制震ダンパーの設置が有効です。とくに木造3階建ては揺れが大きくなりやすいため、耐震性を向上させる方法として一般的です。

木造3階建ての寿命を延ばすには?

木造3階建て住宅の寿命を延ばすには、定期的なメンテナンスが必要です。

外壁や基礎部分の点検・修繕、そしてその時代の基準に合わせた耐震補強を適切に行うことで、長く安心して住むことができます。

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この記事の監修者プロフィール

【監修者】市村千恵

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