2023年12月12日更新
【鉄筋コンクリート造への建て替え】木造との違いも解説!
住宅を建て替えるときには、より快適な住宅にするために押さえておきたいポイントがたくさんあります。この記事では、鉄筋コンクリート造や木造の違いとメリットやデメリット、建て替えの流れについても細かく解説。建て替えで知っておくべき注意点も紹介します。
目次
建て替えの際選ばれる鉄筋コンクリート造とは
住宅を建て替える際、よく選ばれる構造として鉄筋コンクリート造が挙げられます。では、鉄筋コンクリート造とは、どのような構造なのでしょうか?
鉄筋コンクリート造とはRC造とも呼ばれ、鉄筋とコンクリートとを用いて、柱や梁、壁、床などが造られている構造のことを言います。鉄筋とコンクリートがそれぞれの欠点を補い合うため、強度に優れているのが特徴です。
鉄筋コンクリート造はさらに「ラーメン構造」と「壁式構造」の2つの種類があり、工法や特徴に違いがあります。
ラーメン構造とは、簡単に言うと柱と梁で四角形を構成していく構造で、この四角形のフレームで建物を支えるため、室内に構造壁を設ける必要がない場合が多く、空間の自由度が高いのが特徴です。
壁式構造とは、その名の通り壁と床・屋根で建物を支える構造です。ラーメン構造のように柱や梁で支えるのではなく、面で建物を支えるので空間に凹凸がなく、スッキリとした空間を造ることができます。
鉄筋コンクリート造のメリット
鉄筋コンクリート造にはたくさんのメリットがあります。
1つ目は、耐震性の高さです。鉄筋コンクリート造の鉄筋は引張力に強く、コンクリートは圧縮力に強いため、揺れによるダメージが小さくなり地震に強いと言われています。
2つ目は、耐火性の高さです。鉄筋コンクリートは熱に強く、炎に数時間さらされても強度が下がることがありません。火災保険の保険料が、一般的な木造住宅に比べると約1/3であることも、その証明だと言えるでしょう。
3つ目は気密性に優れており光熱費の節約にもつながる点です。部材自体の気密性が高いだけではなく、柱と壁が一体になっており、隙間ができにくい構造になっているため、高い気密性を保つことができます。
4つ目は耐用年数が長いことです。鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は47年で、木造に比べると約2倍です。木造や鉄骨造に比べ、経年や他の原因での劣化が起きにくいので、住宅を長持ちさせることができます。
そして、最後に5つ目は、デザインの自由度の高さです。他の構造では困難な円形や曲線などのデザインも、鉄筋コンクリート造では可能になります。
鉄筋コンクリート造のデメリット
鉄筋コンクリート造のデメリットについても見ていきましょう。
まず1つ目のデメリットは、重量が大きいことです。強い地盤が必要となるため、地盤改良などが必要となるケースがあります。
2つ目は、他の構造に比べると建築費が高くなることが多い点です。部材が高いだけではなく、工事期間が長くなるため人件費がかさみ、坪単価でみると一般的な木造の約1.5~2倍ほどになることもあります。
3つ目は、増築や改築、取り壊しが難しく費用も高くなる点です。鉄筋コンクリート造は、頑丈な構造であるが故に壁を取り払ったり、建物を取り壊すのが難しく、工期も長くなるため費用がかかります。
鉄筋コンクリート造と木造の建て替えでの違い
住宅を建て替える上で、鉄筋コンクリート造と木造とではどのような違いがあるのでしょうか。3つの観点から、それぞれの違いを比較して見ていきましょう。
鉄筋コンクリート造と木造の費用相場の違い
費用は、導入する設備やデザイン性などにより大きく変わってきますが、延べ床面積40坪の標準的な住宅の平均的な坪単価は、鉄筋コンクリート造で約80万円、木造で約50万円です。
このように一般的には、木造住宅の方が建築費の相場は安くなります。しかし、それぞれの耐用年数で割り戻して考えると、鉄筋コンクリート造は約1.7万円/年、木造は2.2万円/年となり、建物の寿命を考慮すると、鉄筋コンクリート造の方が割安と言えるでしょう。
鉄筋コンクリート造と木造の耐用年数の違い
鉄筋コンクリート造と木造とでは、その構造の違いから耐用年数も異なります。税務上使用される「法定耐用年数」は鉄筋コンクリート造が47年、木造は22年です。
あくまでも税務上利用される年数であるため、この年数を過ぎると建物が寿命を迎えてしまうというわけではありませんが、鉄筋コンクリート造の方が木造より耐用年数が長いということは、構造体として丈夫であると言えます。
鉄筋コンクリート造と木造の工期の違い
工事期間を比較すると、鉄筋コンクリート造の方が工期は長くなり、木造住宅の約1.5倍ほどになるケースも多いでしょう。
これは、鉄筋コンクリート造では木造住宅のように木材のみで施工しないため、構造体部分を造るだけでも、さなざまな業種の人が関わり、プロセスも多くなるためです。
工事期間は鉄筋コンクリート造の方が木造より長くなりますが、それだけ建物の構造としても丈夫であると言えます。
鉄筋コンクリート造への建て替えの流れと注意点
住宅を鉄筋コンクリート造へ建て替えする際には、様々な手続きや工事の段取りが必要になります。ここからは建て替えをする際の全体的なおおまかな流れと、それぞれの内容を見ていきましょう。
建て替えの流れ
1.業者の選定
2.設計の決定と契約
3.仮住まいへの引っ越し
4.解体工事
5.建物滅失登記
6.地盤調査
7.地盤改良
8.鉄筋コンクリート造の建築工事
9.工事完了後登記手続きと新居への入居
1.業者の選定
建築会社の中から工事を依頼する業者を決めます。業者により得意な構造や工法が異なるため、鉄筋コンクリート造の施工実績が豊富で、信頼のおける業者を選定することが大切です。
建築業者を決めると、設計事務所や解体業者などが指定される場合があります。もし、設計や解体工事について、他の業者に依頼を希望する場合は、事前に伝えておきましょう。
2.設計の決定と契約
建て替える鉄筋コンクリート造住宅の間取りや設備などの具体的な設計内容を決めていきます。設計プランの内容で建築費用が決まってくるため、予算を考慮したプラン選びを心がけるようにしましょう。
設計内容が決定すれば、建築会社の正式見積もり金額に合意の上で、工事請負契約を締結します。これで、建て替える住宅の設計内容と工事金額が決定し、具体的な工事の段取りに進んでいきます。
3.仮住まいへの引っ越し
建て替えでは現在の住宅を解体するため、新居が完成するまでは仮住まいが必要です。基本的には自分たちで仮住まい先を探さなければなりません。
しかし、入居期間の短い仮住まいの場合は、入居を受け付けていなかったり、一般的な賃貸契約では契約期間内に退去することになるため違約金が発生するケースもあります。事前に十分確認しておくことが大切です。
4.解体工事
住んでいた住宅を解体していきます。解体工事での注意点は、見積もりで提示された内容と金額を事前にしっかり確認しておくという点です。廃材の処分費用は含まれているのか、解体の範囲は住宅のみか、外構も含むのか等を把握しておきましょう。
また、解体工事をする前には近隣住民へきちんと挨拶をしておくことも大切です。騒音やほこりなどでトラブルにならないよう、解体工事業者にも事前に近隣に挨拶してもらうよう依頼しましょう。
5.建物滅失登記
建物滅失登記では、登記していた建物が解体により滅失したことを登録します。手続きは解体後1ヵ月以内にする必要があります。手続きについては施工業者が代理で行うケースもあるため、相談しておくようにしましょう。
6.地盤調査
解体後の土地の地盤の強さを調査します。特に、鉄筋コンクリート造に建て替える場合は、地盤にある程度の強度が必要です。この地盤調査の結果と設計した住宅を踏まえて、地盤改良の有無や内容を決定します。
7.地盤改良
地盤調査の結果と設計した住宅を考慮して、必要なだけ地盤を補強する工事を行います。
行われる工事内容によって費用は大きく変わるため、改良工事の内容がある程度決定した時点で建築会社に相談し、費用についても把握しておくと安心です。
8.鉄筋コンクリート造の建築工事
地盤改良工事が完了したら設計した住宅を建設していきます。ここでも、きちんと近隣挨拶や工事計画の説明を行うことを忘れないようにしましょう。また、工事の進捗状況を把握しておくことも重要です。
工事が進んでいくと、外壁の素材や内装のデザインなど、様々な打ち合わせも発生してきます。
9.工事完了後登記手続きと新居への入居
建て替え工事が完了したら、まず新しく建て替えした住宅を建物表題登記で登録する必要があります。こちらも手続きは建築会社が代理で行うケースがあるため、相談してみると良いでしょう。
また、登記手続きと同時に仮住まい先の退去手続きを済ませ、いよいよ新居へ引っ越します。
建て替える際の注意点
住宅を建て替える際には大切なのは、地元で十分な施工実績があり、解体工事など関連工事をきちんと管理できる建築会社を選ぶことです。
しかし、その他にも注意しておきたいポイントがあります。ここからは、建て替える際に特に注意が必要な点をご紹介します。
再建築不可物件は建て替えができない
再建築不可物件とは、現行の建築基準法に適合しないために建て替えることができない物件のことを指します。しかし、なぜ建て替えをすることができないのでしょうか。
建築基準法上、建物は道路に2m以上接している必要があります。道路に接道していない、もしく接道部分が2m未満である場合は、条件に適合しないため再建築することができないのです。
このような住宅で建て替えをするには、条件を満たせるように建て替え時に建物をセットバックして道路幅を確保したり、近隣の土地を購入して道路幅を広げるなど、想定外の費用が発生するケースがあります。
もしくは、建て替えではなく、家の骨組み部分のみを残して新しく作り変える、全面リフォームであれば行うことができるため、再建築不可物件で家を新しくしたい場合には、リフォームが有力な選択肢になるでしょう。
地中埋設物が見つかった場合は別途費用が必要
解体をして地盤調査や地盤改良をする際に、地中から以前の住宅の解体廃棄物や井戸などの埋設物が発見されるケースがあります。
このような場合には、埋設物の除去費用が別途必要です。大きさや量などにより費用は大きく変わるため、地中埋設物が見つかった場合は、除去費用の見積もりを作成してもらうようにしましょう。
地盤改良が必要な場合は費用が高くなる
解体後に地盤調査を行い、地盤が軟弱だと判断された場合は、地盤を改良して補強する必要がでてきます。特に鉄筋コンクリート造は重量が大きく、強固な地盤が必要となるため、地盤改良費用も高くなる傾向があります。
事前に近隣での地盤調査データを元に、地盤改良費用を極力抑えられる設計にすることも、予算を抑えるためのポイントになります。
鉄筋コンクリート造に建て替える際に組めるローンと減税制度
鉄筋コンクリート造に建て替える際にはどのようなローンが利用できるのでしょうか?ここからは、建て替える際に利用できるローンや、減税制度についてご紹介します。
建て替えの際に組めるローン
建て替えをする際には、一般的な住宅ローンを利用することができます。
融資実行までの流れは、まず、建て替えのプランがある程度固まった段階で金融機関へ仮審査を申し込みます。ここで大切なのは、そのローンが建築費用のみではなく、解体費用や地盤工事費用なども対象となるかどうかを確認しておくことです。
仮審査が通れば、建築会社と具体的に設計などの話を進めていきます。建築プランが決定し、建築会社と工事請負契約を締結したら、金融機関の本審査が始まります。本審査に通過すると工事に着工します。
建築会社への支払のタイミングは、通常、一括ではなく複数回に分けて支払うことになります。会社により異なりますが、契約時に1割、着工時2割、工事中4割、引渡し時3割などが一般的です。
減税制度
住宅の建て替えにおいて、2021年3月時点で活用できる減税制度は5つあります。
1.印紙税
2.登録免許税
3.不動産取得税
4.固定資産税
5.住宅ローン減税
建て替える際には、これらの内容や条件についても事前に確認しておきましょう。
鉄筋コンクリート造に適用される補助金と助成金制度
鉄筋コンクリート造を建築する際、条件を満たすことで適用される補助金や助成金制度はいくつかあります。
内容は各年度や地方自治体によって異なり、また、利用可能枠などを設けている場合もあるため、事前にお住まいの自治体の制度について確認しておくようにしましょう。
例えば、建物の解体やブロック塀解体除去に係る費用について補助金制度を設けている地方自治体があります。
建築の際には、太陽光発電設備の導入や省エネ給湯器、省エネサッシ、雨水タンクなどを導入する際に利用できる補助金制度や、生垣の設置や壁面、屋上緑化についても補助金が受けられる場合があります。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!
この記事で大体の予想がついた方は次のステップへ行きましょう!
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」
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一生のうちに建て替えをする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
一級建築士事務所アルド住宅研究所
弘中純一一級建築士、宅地建物取引士。プレファブ住宅の開発からスタートし、以来40年にわたり住宅産業に従事。建築設計事務所・住宅リフォーム会社の経営を経て、現在は住宅の悩みを解決する、コンサルティングを中心に活動中。
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