2024年10月22日更新
建て替えで相続税対策を!相続のタイミングで建て替えるメリットや費用を抑える方法を紹介
相続税は建て替えを行うことで、支払額が低く抑えられます。そのため、空き家として放置するのではなく、建て替えすることも視野に入れましょう。本記事では、相続税の基本知識や建て替えとの関係、家を建て替えるメリットについて紹介します。相続税と建て替えの関係について隅々まで解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
そもそも相続税とは

相続税とは、親族が亡くなった際に発生する財産を受け取るときの税金のことです。
以下の財産が相続税の対象になります。
- 金融資産
- 不動産(家屋を含む)
- 動産
- 各種権利
- 事業用財産
相続税として受ける不動産が築古の場合、建て替えを検討する方も多いでしょう。
相続時に不動産を建て替えする場合、さまざまな相続税対策を受けられます。
建て替えと不動産の相続は、利点が多い関係になります。
相続税の算出方法

相続税の算出方法を、以下のステップ順に紹介します。
- 【ステップ1】純資産をもとに計算する
- 【ステップ2】課税対象額をもとに計算する
- 【ステップ3】課税額をもとに計算する
順番に見ていきましょう。
【ステップ1】純資産をもとに計算する
相続税はすべての相続物に課されます。
相続税にはプラス的資産だけでなく、マイナスの資産も含まれます。
まずは、純資産を求めましょう。
純資産=資産+負債-葬儀費用 ※通夜・告別式などの葬儀費用は資産から差し引ける |
純資産を求めたら、次に課税対象額を明らかにしていきます。
【ステップ2】課税対象額をもとに計算する
課税対象額は、以下の計算方法で求められます。
課税対象額(総額)=純資産-基礎控除額 ※基礎控除:課税対象額の負担軽減させるための控除制度 3,000万円+600万円×(法定相続人の数)で計算可能 |
総額の課税対象額が明らかになることで、個人の課税対象額を計算できます。
個人の課税対象額を計算するためには、個人の法定相続分を明らかにする必要があります。
法定相続分の考え方は、以下の通りです。
配偶者+子供の場合 | 配偶者2分の1、子供2分の1 |
配偶者+父母の場合 | 配偶者3分の2、父母3分の1 |
配偶者+兄弟姉妹の場合 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1 |
法定相続分が明らかになれば、以下の計算方法で個人の課税対象額を計算しましょう。
個人の課税対象額=課税対象額(総額)×個人の法定相続分 |
【ステップ3】課税額をもとに計算する
個人の課税対象額が判明したら、控除額と税率を確認しましょう。
国税庁によって定められている税率・控除額の一覧表は、以下の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | – |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
対象の控除額と税率が確認できれば、以下の計算方法で相続税額を求めましょう。
相続税額=(個人の課税対象額-控除額)×税率 |
順序通りに計算することで、課される相続額が明らかになります。
【パターン別】建物の建て替えで相続税がどれくらいお得になるのか

相続税が3パターンのシチュエーションでどれくらいお得になるのかについて、以下を基準に計算していきます。
- 資産合計1億円
- 資産のうち、建物3,000万円
- 負債3,000万円
- 葬儀費用500万円
- 相続人3人(配偶者+子供2人)
1つずつ順番に解説していきます。
①建て替え前に相続
建て替え前に相続した場合、相続時の算出方法で解説した計算方法が基準になります。
純資産=1億円(資産合計)-3,000万円(負債)-500万円(葬儀費用)=6,500万円 |
純資産を求められたら、次に課税対象額を計算します。
課税対象額(総額)=6,500万円(純資産)-4,800万円(基礎控除額)=1,700万円 ※基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円 |
法定相続人個人の課税対象額は、以下のように求めましょう。
【配偶者】1,700万円(課税対象額(総額))×1/2(分配割合)=850万円 |
【子供1】1,700万円(課税対象額(総額))×1/4(分配割合)=425万円 |
【子供2】1,700万円(課税対象額(総額))×1/4(分配割合)=425万円 |
次に、個人の課税対象額から、控除額・税率を求めます。
【配偶者】850万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=85万円 |
【子供1】425万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=42.5万円 |
【子供2】425万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=42.5万円 |
最後に、各個人の課税対象額を足し合わせることで相続税額が求められます。
相続税額=85万円(配偶者の課税対象額)+42.5万円(子供1の課税対象額)+42.5万円(子供2の課税対象額)=170万円 |
よって、建て替えせずに相続する場合にかかる相続税額は170万円になります。
②建て替え後に相続
建て替え後の条件に、以下条件を加えます。
- 現金・預金3,000万円を使って建物を建て替える
- 固定資産税は建築費用の50%
まずは、建物の固定資産税評価額を以下の方法で計算しましょう。
3,000万円(建築費用)×50%(固定資産税)=1,500万円(建て替えた建物の資産価値) |
建て替えの際、500万円の建物を取り壊し、建築費用の2,000万円が資産から減っています。
これらを加味して、総資産と純資産を求めます。
総資産=1億円(資産合計)+1,500万円(建て替えた建物の資産価値)-500万円(取り壊し費用)-2,000万円(建築費用)=9,000万円 |
次に、純資産を求めましょう。
純資産=9,000円(総資産)-3,000万円(負債)-500万円(葬儀費用)=5,500万円 |
純資産を求められたら、前述同様、課税対象額を計算します。
課税対象額(総額)=5,500万円(純資産)-4,800万円(基礎控除額)=700万円 ※基礎控除額:3,000万円+600万円×3=4,800万円 |
法定相続人個人の課税対象額は、以下のように求めましょう。
【配偶者】700万円(課税対象額(総額))×1/2(分配割合)=350万円 |
【子供1】700万円(課税対象額(総額))×1/4(分配割合)=175万円 |
【子供2】700万円(課税対象額(総額))×1/4(分配割合)=175万円 |
次に、個人の課税対象額から、控除額・税率を求めます。
【配偶者】350万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=35万円 |
【子供1】175万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=17.5万円 |
【子供2】175万円(課税対象額(個人))×0.1(税率)=17.5万円 |
最後に、各個人の課税対象額を足し合わせることで相続税額が求められます。
相続税額=35万円(配偶者の課税対象額)+17.5万円(子供1の課税対象額)+17.5万円(子供2の課税対象額)=70万円 |
よって、建て替えせずに相続する場合にかかる相続税額は70万円になります。
建て替えする前と建て替え後にかかる相続税を比較すると、建て替え後に相続する方が、100万円お得になることが分かりました。
建て替えにかかる費用の目安

建て替えにかかる費用は、2000万円が目安です。
建て替えは新築と異なり、解体費用がかかります。
建築費については、新築を建てる場合と考え方は大きく変わりません。
また、建物を建てる際には諸費用がかかってきます。
建て替えの場合は、仮住まいの費用や解体前と入居前の引っ越し費用などが必要になります。
相続税で建て替え費用を抑える方法

相続税で建て替え費用を抑える方法について紹介します。
- 解体業者と建て替え業者をわける
- 建て替え後に相続を行う
それぞれ順番に見ていきましょう。
解体業者と建て替え業者をわける
建て替え費用を安く抑えるなら、解体業者と建て替え業者をわけましょう。
解体も含めて、建築会社やハウスメーカーに依頼した場合、解体業者が下請けになります。
解体業者を下請けとして使用する場合、中間マージンが発生し、費用が上乗せされます。
解体業者に直接依頼すれば、中間マージンは発生しないため、中間マージン分の出費を抑えることが可能です。
業者探しや打ち合わせ、日々のやり取りなどを自分で行う必要があるため、時間がない方や余計な手間をかけたくない方は建築会社やハウスメーカーにまとめて依頼することをおすすめします。
建て替え後に相続を行う
建て替え費用を安く抑えるなら、建て替え後に相続しましょう。
先述した通り、建て替え前に相続する場合と建て替え後に相続する場合では、数百万円近く相続税を安くできることが分かります。
相続税対策を行うためにも、建て替え後に相続するようにしましょう。
建て替えの相続税対策にも効果的な「小規模宅地等の特例」とは

小規模住宅の特例とは、以下の条件を満たすことで、宅地・土地の評価額を80%もしくは50%減額できる制度のことです。
- 亡くなった方の配偶者
- 亡くなった方と生活の拠点が一緒であった親族
小規模住宅の特例を受けるためには、相続税申告が必要になります。
以下の必要書類とともに、申告書を提出しましょう。
- 被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍の謄本
(または図形式の法定相続情報一覧図の写し) - 遺言書の写し(または遺産分割協議書の写し)
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
- 申告期限後3年以内の分割見込書(申告期限内に分割ができない場合)
その他、家なき子のときは、居住家屋の登記簿謄本や被相続人が必要になります。
また、老人ホームに入居していた場合には、介護保険証や老人ホームの入居契約書などが必要になるため、状況によって必要書類を準備しましょう。
小規模住宅の特例の家なき子とは、配偶者がいない方や同居相続人が居ないことを指します。
要件を満たすことで、小規模住宅の特例を受けられます。(※別称:家なき子特例)
相続のタイミングで家を建て替えるメリット

相続のタイミングで家を建て替えることで、以下のメリットを得られます。
- 賃貸マンション・アパートの収入が期待できる
- 店舗やシェアハウスなどの運営ができる
- 住み家を新しくできる
1つずつ順番に紹介していきます。
賃貸マンション・アパートの収入が期待できる
建て替え面積が広い場合、賃貸マンション・アパートを十分に建てられます。
相続した家の遠方に住んでいたとしても、賃貸管理会社に管理を委託することが可能です。
自分たちが住むだけではなく、賃貸マンション・アパートとして運営することも検討しましょう。
店舗やシェアハウスなどの運営ができる
新しく家を建て替えする場合、店舗やシェアハウスなどの運営ができます。
店舗は簡単なカフェから、本格的な飲食業までさまざまな媒体で活用可能です。
シェアハウスの場合、近隣に学生街があるなら、学生をメインに貸し出せます。
管理・運営は、賃貸管理会社に委託できるため、自分たちの負担になることもありません。
住み家を新しくできる
相続で家を建て替える場合、住み家を新しくできます。
今の暮らしを大きく変えられるため、ライフスタイルの変化を起こしたい場合におすすめです。
今住んでいる家に不満を感じているなら、新しい家で不満を解消させるための建て替えも可能です。
新しい家は日常生活が充実するきっかけにもなるため、ポジティブに考えましょう。
実家を相続時に建て替えせず空き家として残しておくリスク

相続によって放置された実家を空き家として残しておくか悩む方も多いでしょう。
ここからは、実家を相続時に建て替えせず空き家として残しておくリスクを紹介します。
- 近隣トラブルに発展する恐れがある
- 犯罪リスクが高まる
- 資産活用のタイミングがなくなる
- 固定資産税を負担する必要がある
それぞれ順番に解説していきます。
近隣トラブルに発展する恐れがある
空き家として放置しておくことで、近隣トラブルに発展します。
空き巣に入られたり、周辺に雑草や虫が湧いたりすると、近隣にも被害がおよびます。
最悪の場合、地震や台風などにより、建物が倒壊・損傷する恐れもあるでしょう。
近隣に被害がおよぶことにもなるため、早めの対策が必要です。
犯罪リスクが高まる
空き家として放置しておくことで、犯罪リスクが高まります。
窃盗や落書き、無断使用など、空き家での犯罪リスクはさまざまです。
放置している空き家で犯罪が発生すると、近隣にも被害がおよぶこともあります。
警察沙汰になると、所有者の事情聴衆も必要になってきます。
大ごとになると、時間やお金などを余計に失うことになるため、空き屋として放置することはおすすめできません。
資産活用のタイミングがなくなる
空き屋として放置してしまうと、資産活用のタイミングが無くなってしまいます。
空き家を建て替えたり、再活用したりすることは、決して簡単なことではありません。
所有者の負担がかかることでもあるため、後回しにしてしまうと、手が付けにくくなります。
資産活用のタイミングを逃さないためにも、相続後すぐにどのように不動産を活用していくのかを明らかにしておくことが大切です。
固定資産税を負担する必要がある
空き家として放置し続けることで、固定資産税増額につながります。
固定資産税とは、土地や家屋、償却資産に課される税金のことです。
毎年1月1日の時点で、固定資産の所有者として固定資産課税台帳に登録されている方が納税対象者になるため、相続後に空き家として放置している場合でも納税が必要になります。
使用していない建物の税金を支払うのは、勿体がないことです。
支払った税金を無駄にしないためにも、空き屋として放置するのではなく、建て替えやその他の用途で使用することをおすすめします。
相続時の建て替えで活用できる補助金

建て替え時に使用できる補助金は、以下の通りです。
- 解体費用助成金
- ブロック塀解体費用の補助金
- 木造住宅の耐震建て替え補助金
- 設備関連導入に伴う補助金
- 緑化によって受けられる補助金
建て替え時には、解体費用や諸費用など、さまざまな支払いに対応するために費用の準備が必要です。
それぞれのシーン別に、補助金を受けられるため、興味がある方は利用を検討しましょう。
詳しくは「住宅を建て替える際に受けられる補助金の種類について解説!」にて、紹介していますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。
相続税をもとに建て替えする際によくある質問
最後に、相続税をもとに建て替えする際によくある質問をご紹介します。
- 建て替え時に贈与税はかかる?
-
実家の名義が親名義の状態で、子世帯が110万円以上のリフォームをする場合、贈与税がかかります。
110万円以上は実家を贈与したと判断されてしまうからです。
子世帯の負担で1,000万円のリフォームをした場合、非課税枠の110万円を差し引いた890万円が贈与税の対象になります。
- 土地なしで家を建て替える費用はいくら?
-
土地ありで家を建て替える場合、約3,000万円(坪単価60万円の場合)が目安です。
土地なしの場合は、建築費や諸費用に土地代がプラスされるため、4,000万~5,000万円ほどの費用を想定しておきましょう。
土地の場所や建築へのこだわりなどによっては、費用が積み重なります。
- 相続時に実家を建て替えすると後悔しやすい?
-
相続時に実家を後悔するかどうかは、所有者によって異なります。
今住んでいる家を新しくしたいと考えているのなら、建て替えを検討してもよいでしょう。
後悔するかどうかは、所有者の考え方や相続時の状況によって異なるため、後悔しやすいとは言い切れません。
- 実家の建て替えでお金が足りない場合の対処法は?
-
建て替えにお金が足りない場合、以下の方法を活用しましょう。
- 住宅ローンを借りる
- 補助金や助成金を活用する
- ローコスト住宅を検討する
どうしても足りない場合は、建て替えを諦めて、リフォームすることもおすすめします。
- 相続時に建て替えする場合の名義変更のタイミングは?
-
相続時に建て替えする場合、名義変更は建て替え前に済ませておきましょう。
建て替え前に済ませておくことで、贈与税の対策や住宅ローンの締結が優位に働きます。
また、補助金や助成金などの優遇制度が受けられます。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
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