2024年12月03日更新
バリアフリー住宅の建て替えに使える補助金はある?バリアフリーの具体例やメリット・デメリットも紹介
バリアフリー住宅を新たに建築する際、バリアフリーに特化した補助金はありません。しかし、建物の新築時に使える補助金はいくつかあります。
この記事では、バリアフリー住宅を新築する際に使える補助金や減税制度を紹介します。バリアフリーの具体例や、快適なバリアフリー住宅にするためのポイントも紹介しましょう。
目次
バリアフリー住宅とは
バリアフリー住宅とは、高齢者や障害者が安全な生活を送るために設計された住宅です。
車椅子や杖での生活を想定して家の段差をなくしたり、階段や浴室に手すりを設置することで、車椅子や杖を利用する場合でも過ごしやすい環境にできます。
また車椅子での移動をしやすくするために、廊下の幅を広くしたり、介護のスペースを広く取るといった視点も重要です。
バリアフリーとは、快適な暮らしの妨げになるバリア(障壁)をフリー(取り除く)にするという意味で使われています。
バリアフリー住宅の建築費用相場
バリアフリー住宅を建築する際の費用例 | 1,500万~3,500万円 |
バリアフリー住宅を建築する際にかかる費用は、1,500万~3,500万円が相場です。
一般的な住宅と比較して、特別に高額というわけではないため、通常の新築時と費用はそこまで変わらないと言えるでしょう。
バリアフリー住宅を新築で建てる際に使える補助金はある?
バリアフリー住宅を建築する際に、使える補助金はありません。
ただし、バリアフリー住宅に特化しているわけではありませんが、自治体ごとに補助金事業を実施している場合があります。
また新築後のバリアフリー化リフォームで使える事業はあります。
【建て替え時】各自治体の補助金
国が行う住宅補助金制度の他、各都道府県や市区町村によって、補助制度を導入している場合もあります。
要件や補助金額は各自治体によってさまざまです。お住いの地域で、新築の際に受けられる補助制度がないか、自治体に問い合わせてみましょう。
【リフォーム時】高齢者住宅改修費用助成制度
介護のためのリフォームには高齢者住宅改修費用助成制度を活用できます。
詳しくはこちらの記事からご確認ください。
バリアフリー住宅を新築で建てる際に使える減税制度
補助金制度同様に、新築でバリアフリー住宅を建てる場合に特化した減税制度はありません。
しかし、一定の条件を満たせば一般住宅の減税制度が適用されます。
住宅ローン控除
条件 | 控除額 |
・床面積が50㎡以上 ・省エネ基準適合住宅である | 最大45.5万円 |
住宅ローンは、無理のない負担で住宅確保を促進するための制度です。
新築時で住宅を建てた際に適用される住宅ローンの控除額は、最大45.5万円です。
住宅ローン減税が適用されれば、年末におけるローン残高の0.7%が、原則13年間所得税などから控除されます。
所得税で控除しきれない分に関しては、翌年の住民税から控除されます。
固定資産税の減税
条件 | 減税額 |
・床面積が50平米以上、280平米以下 | 固定資産税の1/2 |
新築住宅の固定資産税減税制度は、良質な住宅の建設を促進し、居住水準の向上と良質な住宅ストックの形成を図るための制度です。
床面性が50平米以上280平米以下の原則を満たしている場合、固定資産税の1/2が3年間にわたり減税されます。
固定資産税の他、都市計画税の減税処置については、各自治体によって異なります。
バリアフリーの具体例
バリアフリーの具体例 | ・段差を解消する ・手すりを設置する ・気密性、断熱性を確保する ・介護スペースを確保する ・緊急時用のエネルギー確保をする |
バリアフリー住宅は対象者に合わせて、快適で安全な生活が送れるように考慮するのが重要です。
ここでは、場所別に具体的なバリアフリーの例をみていきましょう。
バリアフリーリフォームを行うと、既存の住宅を利用しながら、バリアフリーを取り入れることが出来ます。
築年数や耐震性の視点からも考慮して、建て替えとリフォームのどちらが向いているか検討しましょう。
玄関
玄関のバリアフリー具体例 | ・スロープを設置する ・手すりを設置する ・入り口を引き戸にする ・幅90㎝以上の広さを確保する |
玄関は、車椅子や杖などでの生活を想定して、スロープや手すりを設置すると段差の移動が楽になります。
また、入り口は出入りが簡単にできる引き戸にするだけではなく、手が不自由な人のために、リモコンキーで自動開閉できる物もあります。
トイレ
トイレのバリアフリー具体例 | ・手すりを設置する ・車椅子でも入れる広さを確保する ・トイレの扉と便器を水平位置に設置する ・引き戸や外開きの扉にする ・寝室に近い場所に設置する |
トイレには手すりを付け、車椅子で介助者と一緒に入れる広さにすることが望ましいです。
またトイレは使用時に立ったり座ったりなど動作が多く、使用頻度も高いため、寝室からできるだけ近い場所が望ましいです。
浴室
浴室のバリアフリー具体例 | ・手すりを設置する ・滑りにい床材を選ぶ ・浴槽と洗い場の床の高さを水平にする ・浴室・脱衣所に暖房器具を設置する ・引き戸にする ・入り口の段差をなくす |
浴室は滑って転んでしまい、怪我をするなど事故が多い場所です。
床は水はけが良く滑りにくい素材を選ぶなど、事故を未然に防げる素材を選びましましょう。
他にも、お風呂からあがった時の温度差によるヒートショックを防ぐために、浴室や脱衣場に暖房設備を設置するのもおすすめです。
また、一般的な浴室に多い折れ戸などでは、中に人が倒れているとドアが開けられなくなってしまうケースもあります。
浴室の入り口を選ぶ際は、万が一の事故に備え、引き戸を選ぶと良いでしょう。
リビング
リビングのバリアフリー具体例 | ・滑りにくい床にする ・段差をなくす ・高さを調整できるテーブルを取り入れる ・部屋全体が温まる暖房器具を選ぶ |
食事など家族が集まる機会の多いリビングでは、高さを調整できるテーブルを取り入れるのがおすすめです。
家族が快適に使えるように、人数や広さに合わせて、さまざまな組み合わせができる物もあります。
また、ヒートショック対策のため、家全体の空調を管理できるシステム(全館空調)を取り入れるのがおすすめです。
キッチン
キッチンのバリアフリー具体例 | ・キッチンの高さを使用する人に合わせる ・広い空間を確保する |
キッチンは、使用する人が使いやすい高さにするのが重要です。
もし車椅子に座ったまま使用するのを想定した場合は、70㎝が使いやすい高さと言われています。一方、車椅子での使用を想定しない場合は、85㎝です。
キッチンは誰が使うのかををよく考えて、決めるようにしましょう。
廊下・階段
廊下・階段のバリアフリー具体例 | ・手すりを設置する ・腰壁を設置する ・コーナーを補強する ・幅90㎝以上を確保する |
廊下や階段は、転倒防止のため手すりを設置したり、車椅子を想定して幅90㎝以上を確保すると良いでしょう。
車椅子の使用を想定する場合、壁やコーナーにぶつかって壁が傷みやすくなります。
そのため、あらかじめ腰壁を設置したり、コーナーを補強しておくのがおすすめです。
手すりを付けた場合はその分空間が狭くなってしまうため、空間の広さを確保する場合は、手すりの出っ張りも考慮しましょう。
寝室
寝室のバリアフリー具体例 | ・ベッドと壁の間に介助者が入れるスペースを確保する ・ベッドの近くにコンセントを設置する ・玄関に近い場所にする |
寝室は、トイレに行く際立ち上がるなどの動作が必要になります。
夜間には、足元が暗くなるためベッドの近くには人感センサー式の照明などを設置するのがおすすめです。
そのため、ベッドの近くにコンセントがあると便利に使えるでしょう。
また、介助者が介助しやすいように寝室は玄関の近くにしたり、ベッドと壁の間にあるスペースは広く確保するのがおすすめです。
快適なバリアフリー住宅にするためのポイント
快適なバリアフリー住宅にするためには、対象者だけではなく、共に生活する家族も快適に過ごせる空間作りが重要です。
ここでは。バリアフリー住宅を建て替えた際に、後悔しないよう意識しておいた方が良いポイントをご紹介します。
対象者以外の家族も快適に過ごせるか意識する
快適なバリアフリー住宅にするためには、対象者だけではなく、家族みんなが使いやすい間取りや設計を考えましょう。
介助が必要な高齢者や、障害のある人の快適性を追求するあまり、他の家族が使いにくい家になってしまえば介助者にとって不便な住まいとなってしまいます。
たとえば、手すりを設置する際、他の家族にとって邪魔になったり、ストレスにならないかという視点を持つのも重要です。
家族みんなが快適に過ごせる空間作りを意識するのは、双方にとってストレスの少ない住宅作りにつながります。
スムーズな動線の確保を考慮する
バリアフリー住宅では、寝室からトイレ、浴室などの水回りへのアクセスをできるだけ近づけると良いでしょう。
水回りに近いだけではなく、直線移動できる動線を意識し、直角に曲がる箇所をできるだけ少なくするのも重要です。
他にも、朝起きてからリビングに向かう途中に洗面所やトイレを設置するなど、生活パターンに合わせた生活動線を確保すると、移動しやすい住まいにしやすいです。
握力の低下など機能の変化を考慮する
バリアフリー住宅は、身体機能の変化に考慮するのも重要なポイントです。
たとえば高齢になると、握力の低下などでドアノブを回したり、指先で引っ張るような作業が難しくなります。
ドアや収納扉の取手などは、あらかじめ大きめで握りやすく、力が入りやすい物にするのがおすすめです。
2階建て以上の場合はリフトやエレベーターの設置を検討する
2階建て以上のバリアフリー住宅では、リフトやエレベーターの設置を検討しましょう。
車椅子での生活を考慮すると、バリアフリー住宅の理想は平屋です。
もし2階建て以上にする場合でも、水回りは1階にまとめておけば、将来車椅子生活になった際も生活に困りにくいでしょう。
どうしても2階に上がる必要がある場合は、リフトやエレベーターがあると便利です。
現時点でエレベーターは必要ないという場合は、将来の設置に備えて、1階と2階それぞれに180×180㎝程度の空間を設けておくと良いでしょう。
災害時のエネルギー確保を考えておく
バリアフリー住宅では、災害時のエネルギー確保を考えておくのも重要なポイントです。
仮に大きな災害が起こった時も、酸素吸入や特殊なトイレを必要とする人は自宅で過ごす必要のあるケースも考えられます。
そのため、あらかじめ蓄電池や太陽光発電の設備を備えておくなど、災害時にもエネルギー確保できる方法を考えておきましょう。
バリアフリー住宅のメリット
こちらではバリアフリー住宅のメリットをご紹介します。
自宅での事故防止になる
高齢者など、転倒事故を起こしやすい人にとっては、たとえ数ミリの段差でも転倒の原因になります。
自宅内でも転倒事故が発生しやすい、浴室やトイレなどの段差をなくすことで、転倒のリスクを減らせます。
また高齢者だけでなく、小さな子供が転んで怪我をするリスクが減らせるのもメリットになるでしょう。
家族や介護者の負担が軽減される
バリアフリー住宅は、車椅子での移動がスムーズだったり、転倒のリスクが軽減されています。
そのため、家族や介護者も介助しやすくなり、歩行の介助など負担が軽減されるのは大きなメリットです。
対象者だけでなく、介助する人の負担が減らせるという点は、とても重要なポイントです。
高齢者や障害者の自立支援になる
バリアフリー住宅は、高齢者や体に障害があっても危険が少ない設計のため、自立した生活の助けになります。
自力で動けず安静にしすぎていると、体を起こす筋力や体力が低下してしまう原因にもなります。
バリアフリー住宅で、ある程度自力で生活できる設備を整えれば、筋力や体力低下を防ぐことにもつながるでしょう。
突然の事態に対応しやすい
万が一自宅で転倒などしてしまった際でも、緊急時にも対応しやすいです。
たとえば廊下のスペースが広く作られていたり、スムーズな動線が確保されていれば、ベッドまで担いで運ぶのも楽に対応できます。
室内で倒れた時も、引き戸や車椅子で十分に通れるスペースを確保していれば、すぐに運び出せるので安心です。
また、万が一突然の事故や病気で体に障害を負った家族が出たとしても、バリアフリー住宅であれば、ある程度の対応ができるでしょう。
バリアフリー住宅のデメリット
バリアフリー住宅は、導入する設備によってはコストが多くかかる場合もあります。
こちらの見出しでは、そのようなバリアフリー住宅のデメリットをご紹介します。
エレベーターなどの設備はコストがかかる
エレベーターの設置などの設備は、設置時の費用だけでなく、ランニングコストもかかります。
自宅に設置するエレベーターは、安全のためにも年1回の定期点検を行うのが一般的です。
メーカーとのメンテナンス契約や修理にかかる費用を含め、年間5~10万円程の費用をみておく必要があるでしょう。
十分な敷地面積が必要になる
バリアフリー住宅は廊下やトイレ、入り口などのスペースを広く確保するために、十分な敷地面積が必要です。
敷地面積が十分でないと、介助のための十分なスペースが設けられないなどの問題が起きてしまうため、注意しましょう。
ハウスメーカーによっては対応できない点がある
バリアフリー住宅は、ハウスメーカーによっては対応できない点がある可能性にも注意が必要です。
ハウスメーカーの中には、ある程度住宅の使用がパッケージ化されていて、柔軟な対応ができないケースもあります。
たとえば照明スイッチの位置や、浴室の広さなど、ハウスメーカーによっては柔軟な対応が難しかったり、追加費用がかかる場合もあります。
バリアフリー住宅を建てる際は、あらかじめ必要な項目や要望をリストアップして、対応可能か確認すると良いでしょう。
バリアフリーが必要ない人にはストレスに感じる場合もある
場合によっては、バリアフリーを必要としない家族にとって、設備がストレスに感じる場合もあります。
たとえば、廊下の手すりがストレスに感じてしまったり、トイレや浴室に手すりがあることで室内が狭く感じてしまうケースもあります。
またエレベーターなどの設備は、必要のない人にとっては邪魔に感じてしまう場合もあります。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!
この記事で大体の予想がついた方は次のステップへ行きましょう!
「調べてみたもののどの会社が本当に信頼できるか分からない…」
「複数社に何回も同じ説明をするのが面倒くさい...。」
そんな方は、簡単に無料で一括査定が可能なサービスがありますので、ぜひご利用ください。
一生のうちに建て替えをする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
一級建築士事務所アルド住宅研究所
弘中純一一級建築士、宅地建物取引士。プレファブ住宅の開発からスタートし、以来40年にわたり住宅産業に従事。建築設計事務所・住宅リフォーム会社の経営を経て、現在は住宅の悩みを解決する、コンサルティングを中心に活動中。
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