2024年11月06日更新
中古住宅の建て替えとリフォームはどちらがお得?費用や判断基準を解説
中古住宅における建て替えとリフォームには一長一短があります。どちらが得ということはないため、それぞれの特徴から自分に適した方法を選びましょう。当記事では、建て替えとリフォームのメリット・デメリットをはじめ、手順や費用を抑えるポイントを解説します。中古住宅を使いやすくしたいと考えている人は参考にしてください。
目次
中古住宅の建て替えとリフォームの違い
中古住宅を使いやすくする方法として、建て替えとリフォームがあげられます。
それぞれの工事内容や費用がどのように異なるのか確認しましょう。
建て替え | リフォーム | |
---|---|---|
工事内容 | 基礎部分を更地にしてすべて建て直す | 基礎部分はそのままに部分的な増改築・修繕を行う |
工事期間 | 4〜8か月 | 1〜5か月 |
工事費用 | 1,500〜4,000万円(規模により異なる) | 350〜2,500万円(規模により異なる) |
特徴 | 間取りや家の向きを変えるなど自由度が高い | 後期が短く費用を抑えられる。設計の自由度が低い |
工事の規模によりますが、一般的にリフォームは建て替えよりも安価で工期も短い傾向にあります。
しかし、建物の老朽具合によってはリフォームよりも建て替えの方が費用を抑えられるケースもあります。
建て替えとリフォームのどちらが適しているかについては、中古住宅の状態によって異なるため状況に応じた判断が必要です。
近年耳にすることの多くなった「リノベーション」は、既存のものを新しくする原状回復が目的の「リフォーム」とは異なります。デザインや機能の追求から新しい価値を生み出す場合に用いられます。
建て替えとリフォームの税金の違いは?
建て替えとリフォームでは、税金面でのさまざまな相違点もあります。
税金 | 概要 |
---|---|
印紙税 | 「工事請負契約」を結ぶ際の税金 |
登録免許税 | 不動産登記にあたって登記を行う者が、国に納める税金 |
不動産取得税 | 住宅や土地など不動産を取得した場合に納める税金 |
固定資産税 | 毎年1月1日時点の土地や家屋の状態によってかかる税金 |
印紙税と固定資産税は、建て替えとリフォームの双方で発生します。
印紙税は工事費用によって数百円から数万円まで前後します。
固定資産税は「課税標準額 × 標準税率1.4%」で算出可能です。
一方で登録免許税や不動産取得税は、原則として建て替えのみで必要な税金となります。
費用 | |
---|---|
登録免許税 | ・土地:毎年1月1日時点の地価公示価格の約70% ・建物:再建築価格の約50~70%新築住宅にかかったもしくは費用の約50〜60% |
不動産取得税 | 建物の固定資産税評価額に4%を掛けて算出 |
それぞれの費用を事前に算出して、無理のない資金計画を立てましょう。
中古住宅を建て替えるかリフォームするかの判断基準
中古住宅の老朽化が気になってきた際、建て替えるかリフォームにするか迷ってしまう人は非常に多いです。
判断が難しい場合には、以下を基準に考えてみると、思考が整理できるので答えを出しやすいです。
- 住み続ける年数
- ライフスタイル
- 建物の寿命
- ローンの支払い
- 金利や増税の動向
それぞれの判断基準を詳しく解説します。
判断基準1 住み続ける年数
建て替えかリフォームで迷った場合、現時点での築年数とこれから先どれくらいその家に住み続けるのかを考えましょう。
古い住宅の場合、老朽化の懸念があるため住み続ける年数によっては建て替えがおすすめです。
一方で、まだ新しい住宅や近い将来引越しする予定がある場合、劣化や不具合の生じている部分だけリフォームする形をとりましょう。
判断基準2 ライフスタイル
建物自体に特段の問題は発生していなくても、ライフスタイルの変化にともない建て替えやリフォームを余儀なくされるケースもあるでしょう。
- 子供が産まれた
- 介護の必要性
- 親との同居
- 子供の独立
高齢者向けの住宅にしたい場合、建て替えではなくバリアフリー仕様のリフォーム工事で事足りるケースが大半です。
子供部屋が必要になり、仕切りで部屋を増やしたい場合にもリフォーム工事で対応できるでしょう。
一方で、二世帯住宅にしたいなどの大きな家族構成の変化に対応できるのは建て替えです。
二世帯仕様にする、キッチンやお風呂を2つに増やすなどの場合はリフォームよりも建て替えるケースが多い傾向にあります。
判断基準3 建物の寿命
古い建物の場合、リフォームの選択肢をとっても数年後に建て替えが必要となる可能性もあります。
一般的な住宅の耐用年数は以下の通りです。
- 木造:約22年
- 軽量鉄骨造:約19〜27年
- 鉄筋コンクリート造:約47年
なお、上記の耐用年数はあくまで定耐用年数であり、家の環境や修繕が行われた頻度などによっても耐用年数は大きく変わります。
築年数だけでリフォームか建て替えを選ぶ前に一度住宅診断を受けてみましょう。
建物だけでなく設備の老朽化が進んだタイミングで建て替えを検討する人も多くいます。
使用頻度の高い水回りは10〜20年が耐用年数とされているため、設備の劣化状況も加味して建て替えを検討しましょう。
判断基準4 ローンの支払い
建て替えかリフォームで迷った場合、住宅ローンをはじめとした各種ローンの支払いの有無で選択肢を判断できます。
ローンが残っていても、ダブルローンや借り換えを行うことで建て替え自体は可能です。
しかし、その分ローン返済額が増えるため返済困難になる恐れもあります。
ローンの残債がある場合、リフォームにより最低限の修理・修繕を行い、返済後に本格的な建て替える方法も視野に入れてください。
判断基準5 旧耐震基準
建て替えもしくはリフォームを検討している住宅が、1981年6月以前に建てられた住宅の場合旧耐震基準で建てられた可能性が高いです。
2011年の東日本大震災では最大震度7と発表され、その後も能登半島地震など大きな地震が続いています。
旧耐震基準の建物は震度6強以上の地震を想定した建築基準ではないため、建て替えかリフォームを検討しましょう。
旧耐震基準では、震度5程度の地震でも建物が倒壊しないことを基準としている
一方で1981年以降に建てられた家は「新耐震基準」とよばれ、震度6〜7の地震が発生しても倒壊や崩壊しないことをとを基準としている
判断基準6 金利や増税の動向
金利や増税の動向から建て替えとリフォームを判断する方法もあります。
増税が決定されれば、より高額になりやすい建て替え費用は、少なくない影響を受けてしまいます。
たとえば2019年のように消費税が2%引き上げられた場合、3,000万円の工事費における費用は60万円も上がります。
金利も同様に考えられます。2024年現在、低金利を推移している住宅ローンは非常に優遇された状態です。
低金利の今、建て替えローンにより建て替えを実施すると費用を抑えやすいです。
この2点より、将来的に建て替えを視野に入れて検討している場合は、これ以上費用がかさまないうちに建て替えを行うという考え方もできます。
現在住んでいる住宅がローンの返済中である場合、建て替え費用に加えてローンの残債相当額を融資してくれる
判断基準7 解体費用
家を建て替える場合には必ず解体工事が必要です。
解体工事にかかる費用は家の構造によって以下のように異なります。
解体工事 | 付帯工事 | |
---|---|---|
木造 | 約75万円〜約120万円 | 約10万円〜約100万円 |
鉄骨造 | 約90万円〜約160万円 | 約10万円〜約100万円 |
鉄筋コンクリート造 | 約120万円〜約200万円 | 約10万円〜約100万円 |
木造よりも鉄骨造や鉄筋コンクリート造の方が耐久性や耐火性に優れているため、解体するときの手間や人手、工期を要します。
そのため、解体費用も木造より高額になるケースが多いです。
なお、住宅に接する道が狭く解体する家で重機やトラックなど利用できない場合、一般的な解体費用よりも割高になる可能性もあります。
他にも、一般的な住宅よりも大きい家や駐車場や倉庫などがある場合はそれらの解体も必要となります。
解体工事を依頼する際には、解体しなければならないものをリストアップし立地などを伝えた上で見積もりをもらうようにしましょう。
地中埋設物は解体後に地面を掘り起こし確認するため、見積もり時には把握できません。
埋没物に関する追加料金を請求された場合、どのような埋設物の撤去なのか、撤去する費用はいくらなのかを請求書に細かく記載してもらいましょう。
中古住宅の建て替えやリフォームのメリット・デメリット
中古住宅の建て替えとリフォームには、それぞれに以下のメリットとデメリットがあります。
それぞれ一長一短があり正解はないため、どちらが自分に適しているか考えてみましょう。
建て替えのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・築年数がリセットできる ・間取りや設備など自由に選べる ・地盤改良や構造の強化を含めた、大掛かりな地震対策ができる ・比較的簡単に多額のローンを組める | ・解体・撤去費用がかかる ・地盤工事が必要になる可能性がある ・建設費が高額になりやすい ・工期が長くなりやすい ・税金がかかる ・仮住まいが必要になる ・引越しを2回しなければならない |
建て替えの最大のメリットは、これまでとは異なった新しい家を建て直せることです。
家の向きや間取りの変更が可能なため、二世帯住宅やバリアフリー化への変更も容易く行えます。
住宅ローンへの申し込みも可能なため、比較的容易に高額のローンが組めるのも利点です。
一方で費用や工事期間がかかるデメリットもあります。
住宅ローンや解体費用以外に仮住まいの引越し代、家賃、不動産取得税などさまざまな費用がかかることを理解しておきましょう。
建て替えの場合、2回の引越し費用や賃貸の初期費用などローンには組み込めない出費があります。事前に必要な費用を算出しておきましょう。
リフォームのメリット・デメリット
メリット | デメリット |
---|---|
・住みながら工事できるケースがある ・費用が抑えられる ・予算に合わせた工事内容が選べる ・税金を抑えられる ・補助金を利用できるケースがある ・工期が建て替えより短い | ・大規模な変更はできない可能性がある ・地盤改良や基礎による構造強化はできない ・予期せぬ追加費用がかかる可能性もある |
中古住宅をリフォームする場合の最大のメリットは、既存の家を取り壊さず新築同様にできることです。
基礎や骨組みは既存のものを利用するため、建て替えよりも費用が抑えられます。
建て替え同様、自治体によってはリフォームで助成金制度が利用できることもあります。
しかし、リフォームは建て替えとは異なり築年数をリセットできるものではありません。
リフォームの内容によりますが、数年後に再度リフォームが必要になる可能性もあります。
中古住宅の建て替え前に考えるべきこと
中古住宅の建て替えは、今後の住まいの快適性を大きく左右するため、後悔しない住宅づくりをする必要があります。
建て替えの業者を選ぶ前にいくつかの項目を決めておくことで、業者選びや計画などをスムーズに進められます。
建て替えの目的を明確にする
建て替え業者を選ぶ前に、まずは建て替えの目的を明確にします。
なぜなら、目的が明確化しない場合、プランを提案されても決断に迷ったり、必要のない工事まで行い後悔する可能性があるからです。
建て替えの理由は住宅の老朽化やライフスタイルの変化、家族構成の変化などさまざまでしょう。
目的を明確にしておけば、業者とのやりとりもスムーズにでき、建て替えに最適なプランを提案してもらいやすくなります。
建て替え費用の予算を決めておく
次に重要なのが建て替えの予算です。
建て替えの際、さまざまな設備やプラン・デザインが提案されます。
しかし「少しでもいい家を」と思い良いデザインやグレードを選んでいると、すぐに予算オーバーしてしまうでしょう。
建て替え費用にかける予算を決めておくことで、プランやデザインがある程度絞れるため、予算内の選択が可能です。
どのような家にしたいか家族で決めておく
新しい住宅を建築する際、できるだけ家族の意見をくんだ家にすることが理想です。
家の建て替え時に、家族全員の意見をすべて取り入れるのは難しいでしょう。
譲れることと譲れないことをしっかり家族で決めて、優先順位をつけてから業者と交渉すると、家族の意見もまとまりやすくなり、決断もしやすくなります。
中古住宅の建て替え費用を抑えるポイント
建て替え費用を抑えるポイントは4つです。
- 木造住宅にする
- 建具のグレードを落としてみる
- 建築費以外を節約する
- 資金援助で節税対策する
ポイント1 木造住宅にする
どのような構造でもメリットとデメリットはありますが、木造住宅は費用を抑えられることが最大のメリットです。
木造住宅のメリット・デメリットは以下の通りです。
- 材料費が安価
- 防錆や耐火処理が不要
- 基礎工事費用を抑えられる
- 木の温もりからリラックスできる
鉄筋コンクリートや鉄骨の住宅に比べて耐震や耐火などに不安に思う人もいるかもしれませんが、近年の木造住宅は技術が向上したこともあり、あまり心配する必要はありません。
一言で木造住宅といっても伝統的な在来工法と2×4工法とがあり、それぞれの工法にメリットとデメリットも。
建て替えの際には専門業者に希望を伝えた上でアドバイスを仰ぐなどしてよく検討しましょう。
ポイント2 建具のグレードを落としてみる
建具や設備にはグレードがあり、同じようなデザインでもグレードを落とすと費用を抑えられます。
家を建て替えるにあたって理想に合うようなデザインや素材を選びたいと思っている方も多いでしょう。
しかし、あまりにも理想を追い求めすぎると、思っていたよりも費用が高くなってしまう場合もあります。
見積もりの際にはどのグレードの素材が使われているかを確認するようにしましょう。
気候や手入れのしやすい素材を選ぶと長期間使用可能です。将来的なメンテナンスコストがかからず、結果的に費用を抑えることに繋がります
ポイント3 建築費以外を節約する
解体整地後の地鎮祭や建築途中での上棟式なども簡素に済ませましょう。
工事中の仮住まいにかかる費用は、約6か月分の家賃と敷金礼金の100万円程度必要です。
予算に応じて、自治体の格安住宅である公団の検討すべきでしょう。
ポイント4 資金援助で節税対策する
住宅ローンを利用するのではなく、身内からの資金援助によって節税対策が可能です。
「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」では、令和6年1月1日から令和8年12月31日の間に父母や祖父母などの直系尊属から贈与にかかる贈与税が非課税となります。
贈与者の範囲のほかに贈与を受ける人の年齢・所得・建て替えを終えて居住する時期などに条件があります。
>>住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税について詳しくはコチラ
中古住宅建て替えにおける見積もりのポイント
後悔しないために、見積もりでおさえておきたいポイントは5つです。
- 建て替えの相場を理解しておく
- 見積もり費用は詳細まで確認する
- 相見積もりを取って比較する
- 見積もり金より多く資金を用意する
- 工事費以外の費用を理解する
建て替えの見積もりを依頼しても価格が適正かどうか判断できる人は多くありません。
依頼した業者によって金額に数百万円以上の差が出るケースもあるため、注意が必要です。
損をしないためにも、見積のポイントを正しく理解しておきましょう。
ポイント1 建て替えの相場を理解しておく
中古住宅建て替えの相場は、約30坪~40坪程度の戸建住宅の場合2500〜3600万円程度となります。
建て替え費用の内訳は以下のとおりです。
- 建物の解体費用:約100〜250万円
- 設備代:約300〜500万円
- 建築費用:約1,900~2,500万円
- その他諸費用(住宅ローン手数料・仮住まい費用・税金等):約200〜300万円
なお、解体する建物と新しく建てる建物の規模や使用する構造材、設備のグレードや施工エリア等によって見積もりの金額は変動します。
ポイント2 見積もり費用は詳細まで確認する
建て替えの見積もりを取ったら、建築費用のみではなく解体費用や諸費用といった詳細の金額まで記載されていることを確認してください。
業者の中には建て替えの「建築費用だけ」の見積もりを作り、後から解体費用や諸費用を請求するケースがあります。
見積もりも安さで契約すると、後から他の費用も必要なことに気づいて予算オーバーすることもあります。
解体費用や諸費用を「一式」と記載した不明瞭な見積もりを作る悪質業者も存在します。後々のトラブルを避けるためにも不明瞭な見積もりを出す業者との契約は控えましょう。
解体費用や設備代などの詳細も含めて、合計金額の見積もりを作ってくれるような、良心的な住宅会社を見つけてください。
ポイント3 相見積もりを取って比較する
建て替えを行う住宅会社を選ぶ際には、複数の会社で相見積もりを取り比較しましょう。
建て替え後に導入したいキッチンが、A社では安く仕入れられてもB社は割高になるケースもあります。業者によって得意な施工も異なるため、積極的に相見積もりしてください。
建て替えの相見積もりは、すべての業者に同じ条件で依頼することが重要です。
異なる条件で複数社に相見積もりを依頼しても、金額は当然バラバラになり、プランニングの内容も比較できなくなってしまいます。
リフォーム会社紹介サービスの「ハピすむ」は、 お住まいの地域や建て替え・リフォームのニーズを詳しく聞いた上で、 適切で優良な会社を最大3社紹介してくれます。
複数の大手リフォーム会社が加盟しているため、高額なリフォームを検討している人も安心して利用可能です。
ポイント4 見積もり金より多く資金を用意する
中古住宅建て替え時には、見積もり金額よりも多めに資金を用意しておきましょう。
国土交通省が発表している「令和3年度・住宅市場動向調査報告書」では、建て替えにかかった費用の平均を3,299万円としています。
この他に建て替え中の仮住まい費用も発生するため、返済計画に無理のないプランニングを立てる必要があります。
ポイント5 工事費以外の費用を理解する
中古住宅建て替え時には工事費以外に、住宅ローンの手続きにかかる費用や解体費用、そして登記費用が発生します。
原則として工事費以外の費用は現金で支払う必要があるため、事前に用意しておきましょう。
近所への挨拶の品や上棟式などの費用がかかります。
工事費以外の諸経費として少なくとも200万円程度現金で用意する必要があるでしょう。
中古住宅における建て替えの手順
中古住宅の建て替えには決まった手順や流れがあります。
事前に建て替えの全体像を把握することで、建て替えをよりスムーズに進められます。
中古住宅の建て替えが決まったら、建築会社選びから始めましょう。
住宅を建築する会社は、ハウスメーカーや工務店などさまざまです。
それぞれ住宅にスタイルや構造・施工・デザインなどの特徴があるため、展示場や工務店の見学会、家族・友人の紹介などから、候補となる会社を複数選びましょう。
複数の見積もりを検討し、建て替えを依頼する会社を1社に絞りましょう。
建て替えを依頼する業者が決まったら「工事請負契約書」を交わします。
工事請負契約書とは、住宅の設計図・仕様・金額・工期等が添付・明記された法的拘束力のある契約書です。
間取りや見積もりを十分検討し、不明な点がないようによく理解してから契約するようにしましょう。
契約後は図面・仕様などの詳細な打合わせが行われ、最終的な施工図面の決定となります。
住宅ローンを利用する場合「工事請負契約書」を交わす前に住宅ローンの審査の事前審査を行う必要があります。
正式な住宅ローンの申請は工事請負契約書を交わした後ですが、あらかじめ借り入れ可能か確認しておきましょう。
工事請負契約書に明記されていますが、「契約時」「着工時」「上棟時」「中間金」「竣工時」など数回に分けて支払うことになっています。
解体工事開始日が決まったら、仮住まいに引越します。
引越しは、解体工事が始まる2〜3日前には完了できるようにしましょう。
引越し作業中は照明や水道が必要になるケースも。解体前の電気の外部線取外しや水道を止める工事などの日程も考慮して、引越しから解体まで少し余裕を見ておきましょう。
引越し完了後、電気やインターネット・電話など外部配線の取外しが終了すると解体工事の着工です。
解体工事は、40坪程の木造2階建て住宅で10日から2週間かかります。
法律で分別解体・処分が義務付けられており、解体物の処分にあわせて分別解体されます。
解体工事が完了したら、地盤調査を行います。
地盤調査は、土地の地盤の強さを調べる調査です。
調査結果と土の種類・土地の履歴などを基に、地盤の専門家や建築士が地盤改良の有無・地盤改良の方法を検討します。
地盤調査は必ず行いますが、地盤改良は調査結果により行わない住宅もあります。
工事日数は、工事の種類にもよりますが、約3~6日が目安です。
住宅工事の着工前には「地鎮祭」を行います。
家を建てる土地の神様に家を新築することを報告し、土地を清め工事の無事と完成を祈る祭事です。時間は約1時間かかります。
宗教の定めのない場合、神道の神式で行うことがほとんどです。
建築会社から神社を紹介される場合もありますが、地域の神社にお願いもできます。
地鎮祭が終わったら、新築工事の着工です。
着工する前に「建築確認申請書」を所定の機関に提出して建築許可を得ます。
これは建築会社や設計事務所が行う手続きです。
他にも都市計画法や消防法の届出や、新築工事を着工するまでに必要な申請は、建築会社が行います。
許可がおりたら住宅の基礎工事の開始となり、上棟・木工事完了・内装工事と進み住宅が完成します。
住宅が竣工したら引き渡しです。
竣工から引き渡しまでの間に工事の内容を確認し、住宅ローン実行の手続きを行います。
引き渡しの日には工事費用の決済を行い、最終金を支払います。
新しい家の本鍵を受け取り引き渡しは完了です。
中古住宅建て替えにおける注意点
中古住宅を建て替える際、のちのち大きな問題に発展するケースがあります。
特に注意したいのは、こちらの5つです。
- 建て替えに要する期間
- 地盤調査の実施
- 再建築の可否
- セットバックを要するか
- 借地か否か
注意点1 建て替えに要する期間
中古住宅建て替えの場合、既存の家を撤去してから新しい住宅を建築するため、新築を建てるよりも長期化しやすい傾向にあります。
建て替えにかかる期間の目安の内訳は以下のとおりです。
- ハウスメーカー選び:約1か月
- ハウスメーカー決定、間取りや建設方法の決定、申請手続き:約3か月
- 既存の家の解体撤去工事、新しい家の建築、鍵の引き渡し:約5か月
上記の期間はあくまで目安です。建て替えの計画段階から鍵の引き渡しまでを見てみると、建て替えにかかる期間は約1年近くになることを理解しておきましょう。
注意点2 地盤調査の実施
「瑕疵担保履行法」で必要な保険や供託では、基礎設計を行う上で地盤調査は必須となっています。
今まで家が建っていた場所に地盤調査は要らないと思うかもしれません。
しかし、もともと軟弱な地盤の上に家屋が建てられていた可能性もあります。
地盤調査を行い地盤が軟弱だと判断された場合は、地盤改良工事を行いましょう。
改良工事をするかどうかは、地盤の状態や基礎の種類などを考慮した上で判断されます。
地盤調査や地盤改良工事は、家の取り壊し費用とは別にかかります。建て替えを希望する場合は地盤調査にかかる費用も準備しておきましょう。
注意点3 再建築の可否
接道義務を果たしていない土地の場合、再建築が難しいケースも。
建築基準法で定められている「接道義務」とは、幅4m以上の道路に敷地が2m以上接地しなければならない規定のことです。
土地に接地している道路が建築基準法で認められていない場合や、土地に接している道の幅が2m以下の場合は接道義務を果たしていないことになります。
接道義務は防災上の観点から定められた法律で、消防車など侵入できる公園や広い敷地に隣接している場合家の再建築が認められるケースもあります。
しかし、原則として建て替えできない可能性は高いでしょう。
注意点4 セットバックを要するか
「二項道路」とよばれる幅員4m未満の道路に接した物件の場合、建て替え時にセットバックさせる必要があります。
セットバックとは、土地の境界線から一定以上のスペースを確保して新しい住宅を建てることを言います。
二項道路に接した土地の場合、建て替えの際には道路の中心から2m以上後退させて建築しなければなりません。
セットバックは建物だけではなく、外構の門や塀なども対象になるため敷地や住宅が狭くなるでしょう。
注意点5 借地か否か
中古住宅を建て替える際、当然ですが土地は必要となります。
一般的には自己所有している土地に住宅を建てる、または親などの親族の土地(いずれ相続する予定)に住宅を建てる等のケースが大半です。
しかし、借地に住んでいる場合、土地の所有権は地主にあるため建て替え時には承諾が必要です。
法律的には、借地契約書に増改築を制限する記載がなければ建て替えできるとされています。
借地の場合、建物の構造や形状などは借地契約書に記載されている建物を建てなければなりません。契約書に増改築を制限する記載があれば、住宅の建て替え自体不可となります。家賃滞納や近隣トラブル・地主の相続などにより家の建て替えを断られるケースも存在します。
また、借地での建て替えができることになった場合、住宅ローンの確認も必要です。
住宅ローンは通常、土地と住宅に抵当権を設定して(土地と住宅を担保とする)借り入れできます。
住宅を建て替える際には金融機関に担保を提示しなければなりませんが、借地を担保とすることはほとんどの場合で地主は承諾しません。
もし地主の承諾が得られた場合は、借地に建物を建てる際に住宅ローンを組むことはできます。
しかし、通常の所有地の場合と比べて制限や条件が厳しくなる傾向があるため注意が必要です。
住宅ローン等を借りたい場合は、借地でも融資可能か銀行に確認しておきましょう。
木造住宅の建て替えの際申請できる補助金
鉄骨造や鉄筋コンクリート造と比較すると地震で倒壊しやすい木造は、建て替えを行うことで利用できる補助金・助成金制度があります。
この他にも各自治体が実施している解体費用助成金もあるため、利用できる制度はないか確認しましょう。
補助金の申請は、工事の着工前に行うことが条件となっていることも。補助金の利用を考えているのであれば、工事が始まる前に忘れずに申請しておきましょう。
取り壊しの補助金
木造住宅の建て替えの際に、解体費についての補助制度を用意している地方自治体があります。
建物自体の解体費用や、古いブロック塀の解体費用などが補助の対象です。
申請条件や支給額は各自治体で異なるため、それぞれ確認してみましょう。
新築時の補助金
建て替えの際に、太陽光発電設備やエコキュート等の省エネ設備を導入した場合に補助金が受けられる制度を用意している自治体もあります。
例として、東京都練馬区の補助金制度を確認しましょう。
項目 | 補助金 |
---|---|
太陽光発電設備の導入 | 50,000円 |
家庭用燃料電池システムの導入 | 50,000円 |
蓄電システムの導入 | 60,000円 |
自然冷却ヒートポンプ給湯器の導入 | 25,000円 |
高断熱窓の導入 | 補助対象経費の5分の1(最大10万円) |
この他にも新築の外交整備に対する補助金や助成金もあります。
費用を少しでも抑えたい人は、補助金や助成金を有効活用してみましょう。
>>リフォームに関する補助金について詳しく知りたい方はこちら
【Q&A】中古住宅に関するよくある質問
- 築20年の中古住宅はあと何年住める?
-
築20年の中古住宅があと何年住めるかは建物の構造により異なります。
構造別の耐用年数- 木造:約22年
- 軽量鉄骨造:約19〜27年
- 鉄筋コンクリート造:約47年
上記の耐用年数からもわかるように、築20年の中古住宅は建物自体に大きな問題がない限り、リフォーム実施で住み続けられる可能性は高いでしょう。
- 築30年の中古住宅はあと何年住める?
-
木造住宅の場合は、築22年を超えると建て替えやリフォームを検討する人が増えると言われています。
これは、22年を過ぎると設備機器だけではなく、屋根や外壁材などの資材等も老朽化が進み、複数の箇所で不具合など出てくるためだと考えられます。
建物の状態にもよるため一概に築年数では判断できませんが、耐用年数を目途に設備や建物に不具合を感じたタイミングで建て替えを検討しましょう。
- 買ってはいけない中古住宅とは?
-
買ってはいけない中古住宅の特徴は以下のとおりです。
買ってはいけない中古住宅の特徴- なだれや地滑りの恐れがある
- 水はけが悪い
- 周辺に空き家が多い
- 境界線が曖昧
- 再建築不可
上記に該当する中古住宅は災害やトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
買ってはいけない中古住宅かの判断が難しい場合には、ホームインスペクションの利用を検討してみましょう。
ホームインスペクションとは住宅判断士による住宅や土地の状況調査で「住宅診断」ともよばれます。
- 規格住宅と注文住宅を建て替える際のメリットとデメリットは?
-
規格住宅と注文住宅を建て替える際のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット デメリット 規格住宅 ・価格が一定で多く予算が立てやすい
・デザインや仕様が決まっているためイメージしやすい
・注文住宅より割安なことがある
・時代にあった間取りや設備になっている・間取りが変更できない
・広さや仕様が決まっている
・シンプルな仕様が多い
・土地の形状によっては建てられないケースがある注文住宅 ・自分が希望する間取りにできる
・設備などが自由に選べる・価格が高額になりやすい
・間取りや設備などを一から決める必要がある規格住宅と注文住宅どちらもメリットとデメリットがあります。
このため、予算や新しい住宅に求めることなど合致した方が最適な住宅と言えます。
建て替え・注文住宅に対応する優良な建設会社を見つけるには?
ここまで説明してきた建て替えは、あくまで一例となっています。
実際に建て替えをするべきなのか、リフォームをするべきなのかを検討するためには、プロに現状を相談し、「プランと費用を見比べる」必要があります。
そのときに大事なのが、複数社に見積もりを依頼し、「比較検討」をするということ!
この記事で大体の予想がついた方は次のステップへ行きましょう!
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一生のうちに建て替えをする機会はそこまで多いものではありません。
後悔しない、失敗しない建て替えをするためにも、建設会社選びは慎重に行いましょう!
この記事の監修者プロフィール
リフォーム業界出身のママ建築士。
設計事務所でのアシスタントを経て、地場やハウスメーカー系リフォーム会社の営業設計として勤務。水まわりの交換からフルリノベーションまで、幅広いリフォームを担当した。2022年、前職までの経験を活かして、建築専門ライターに転身。現在は、記事の監修やブログ「新・リフォームの歩き方」の運営をメインに活動する。
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